ガラパゴスどころかシーラカンスになる日本。EVでもAppleに滅ぼされかねない自動車産業の五里霧中

 

そう考えると、現在の日本には様々な課題があることが分かります。話題として、最初にお話しているEVシフトはまさにこの点です。現時点では内燃機関、つまり化石燃料を燃焼させて動力を得る機構にまだまだ依存している日本の自動車産業の「裾野」をどうしていくかは大きな問題になります。何よりも、中期的にはEVシフトが拡大する中で、以下の3つの問題が浮上してくると思います。

  1. EV用電池技術の革新により、EVにおける真の利便性・実用性を実現する問題。具体的には充電時間と航続距離、温度性能の改善
  2. EV部品のモジュール化により、場合によっては基幹部品の標準化が起きる
  3. EVとシェアリング、そしてAV(自動運転車)技術の融合により、自家用車を保有するとか、車両の所有権を販売するというビジネスモデルが崩壊

この中で3番目の「自家用車保有の崩壊」というのは、結果的に車両の稼働率が上がる反面、車両を販売するメーカーのビジネスは縮小する可能性があるわけです。ただ、現時点ではこうした変化はスローですので、この問題については、また改めて考えることにします。

また1番目については、とりあえずパナ、トヨタなどが必死で開発しているので、その推移を見守るしかないと思います。問題なのは2番目のモジュール化です。この問題については、部分に分けて考えることにします。

まずは、車体+艤装(内装の非電子部品)です。これは、例えば低速走行用の簡素なクルマだとか、全く新しい車体が出てきたとしても、ガソリン車と同様の技術で対応可能だと思います。具体的にはボディ、内装、シート、などで日本のメーカー(裾野含む)には競争力はあります。

今のような豪華だったり、スポーツとかアウトドアというような使用する環境と絡めた「テイスト」とか「機能」が多様化している「クルマ文化」がある程度、残るのであればということです。

次に、インストロメンタル・パネルなどコントロールについては、メカからスクリーンに移行中で、トヨタは「メカ=高級」という付加価値イメージを死守する姿勢です。ですが、若い世代を中心にパネルでオッケーということですと、アップルなどが一気に攻めてきて日本は市場を喪失するでしょう。この動きはEV以前でも既に進行中です。

仮に、日本の保安基準が「オール・タッチパネル」はダメというような話になっていくと、日本はガラパゴスではなく、進化の止まったシーラカンス化することになります。この辺は、特に部品メーカー、電装メーカーなどについては死活問題ですが、業態転換などで延命するしかなさそうです。車両の操作系はアプリになって、そのアプリに自由競争がある中では、日本もUIのデザインなどを武器に戦うべきですが、アップルなどに対抗可能かというと難しそうです。

駆動系ですが、トランスミッションはEVの場合は基本的に消滅します。一方で、ブレーキについては、回生ブレーキとディスクブレーキの併用ということで、トヨタがハイブリッドで長年やってきたことの延長上に、日本の部品メーカーの残る余地はあるかもしれません。

問題は、駆動系が徹底的に簡素化されていく場合です。車輪に固定ギアを噛ませてモーターを直結。4輪にモーターを配して車軸も省略。そのブラックボックス化した「車輪+モーター」にブレーキも組み込み。という形で、この駆動系が大中小とか、強力とか高速バージョンとかある中で、標準化されて大量生産に乗るというシナリオです。こうした動きは、2モーター化から4モーター化になっていくと、加速すると思います。仮に本当に標準化が進むと、シャシの標準化も進みます。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • ガラパゴスどころかシーラカンスになる日本。EVでもAppleに滅ぼされかねない自動車産業の五里霧中
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け