ついにイスラエルと断絶か?支持率急落の“逆風”にさらされた米トランプに迫られる「困難」な選択

 

一触即発の状況が再現されかねぬイスラエルとアラブ諸国

今、ロシア・ウクライナ戦争の“仲介”を行っているウィトコフ特使も、ロシア側のウィシャコフ大統領補佐官・ドミトリエフ特使もユダヤ人でありますが、「ユダヤ人とイスラエル人を切り離したい」という意図で共通していると思われ、ウィトコフ特使については、トランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏(同じくユダヤ人で、かつイスラエル人でもある)と共に中東和平の協議にもコミットしているにもかかわらず、自身のユダヤ人としてのバックグラウンドを、あえてイスラエルとは分離するような姿勢を示すようになっています。

この姿勢は、あくまでも個人的な意見ですが、調停・仲介上は“いいこと”なのですが、イスラエル政府はそのウィトコフ特使のデリケートな距離感にもっと注意を払うべきかもしれません。

まさにイスラエル政府・軍、そしてネタニエフ首相は四面楚歌の状況が日に日に鮮明になってきているわけですが、かといってネタニエフ首相も、自身の政治生命への強いこだわりと、訴追されることを回避したいという保身から、あえて耳を貸さず、意に介さないように振舞っています。

常日頃から「イスラエルは単独でも自国の防衛に全力を尽くすし、国家・国民に対するいかなる脅威とも戦い、排除できる」と対決姿勢を示さず、困った状況になると使い古されたanti-Semitismや反シオニズム運動という切り札を使い、攻撃者を非難してきたネタニエフ首相ですが、このところさらに旗色が悪くなったのを感じ取ったのか、国際社会が求め、10月10日に発効している停戦合意にも含まれたガザに対する人道支援の即時実施という合意を覆し、ガザに対するすべてのチェックポイントを閉鎖するという蛮行に打って出ました。

これを受けて、アメリカのトランプ大統領の働きかけでイスラエルとの融和の道を模索してきたサウジアラビア王国も、モハメッド・ビン・サルマン皇太子(MBS)が公式に「サウジアラビア王国はイスラエルに対する外交的・経済的なチャンネルを未来永劫閉鎖する」と述べ、【アブラハム合意を通じたイスラエルとアラブ社会の関係改善の道(トランプ大統領が強く求めていた)をアラブ側から拒絶する決定】を行いました。

これにより、すでにイスラエルとのアブラハム合意を締結していたUAEもその破棄を宣言し、バーレーンもそれに続くことが予想されるため、イスラエルとアラブ社会の対立が今後、さらに強まり、一触即発の状況が再現されることになると懸念しています。

すでにアラブ諸国はトルコやイラン、そして“なぜか”アゼルバイジャンやパキスタンを含んだ協議を緊急に行い、今後の対応について話し合っている模様ですが、その中で、トランプ提案のISFへの参加を表明していたトルコは、まだその可能性を堅持しつつ、“イスラエルとハマス双方が合意を履行し、人道支援が即時に実施され、人道的な危機が回避されること”を条件として掲げ、イスラエルとアメリカにプレッシャーをかける姿勢を、まだ持っていますが、現在、マルチフロントで協議を行っているトルコ政府のカウンターパートによると、「その呼びかけの消費期限はさほど長くはなく、トルコをはじめとする協力国の部隊の安全の確保と武力衝突の停止が保証されない事態が表出した場合には、合意を覆し、部隊の派遣を見送るだけではなく、合意の履行に対する協力も見直さざるを得ないことをイスラエルも、アメリカも理解しないといけない」とエルドアン大統領が指示しているらしく、トランプ大統領が“成功”とアピールするガザ停戦ディールの命運も付きつつあることが覗えます。

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