一枚岩の対応で完成しつつある対イスラエル包囲網
ノルウェーの隣国スウェーデンはここにきて公式にパレスチナ国家の樹立を支持すると表明し、「もしイスラエルがその当然の権利(self-determination)を引き続き妨害し、危害を加え続けるのであれば、スウェーデン政府はイスラエルとの一切の外交的なつながりを絶たざるを得ない」と、すでにイスラエルの凶行を強く非難し、パレスチナ国家の樹立を支持しているフィンランドやデンマークと併せ、北欧・スカンジナビア半島の諸国は全て一枚岩の対応を推し進めることになりました。
さらには、ICCがネタニエフ首相に逮捕状を発出した際には「国際社会は法の支配の原則に基づき、冷静な対応が必要」と距離を置いていたのですが、今週に入り中国政府は公式にネタニエフ首相に対して「ICCおよびICJによる裁定を尊重し、ガザに対するいかなる武力行使も、また非人道的な行為も、即時に停止しなくてはならない。そしてこれまでの非人道的な行いを先頭に立って指揮してきたリーダーの責任は免れることは出来ず、しかるべき形で法による裁きを受けなくてはならない」と、イスラエルに対する態度を硬化させたことには非常に驚いています(一説によると、今、ongoingの米中間の綱引きにおいて、対アメリカ攻撃要素の一つとして、アメリカによるイスラエルへの対応の矛盾を指摘しているという分析もありますが、実際のところは私にも分かりません)。
そして極めつけは、これまでイスラエルに対しては、ホロコーストの罪滅ぼし的な感覚もあって、いろいろな行いを大目に見て、常に「ドイツ国家が存在する理由」として支持してきたドイツ国内で大きな転換が起きてきています。
最も顕著なのが、今週ミュンスターの行政裁判所上級審は「国内においてすべての反イスラエルデモを犯罪として禁止するblanket banは行き過ぎであり、それは国民に認められるfreedom of speechの権利を侵害するものだと考えられる。明らかな行き過ぎやイスラエルの排除を求めるようなメッセージを掲げるデモについては禁止されるべきものと考えるものの、パレスチナ国家の樹立を支持するメッセージを掲げるデモや、イスラエルによるガザ市民への凶行に抗議する集会などは、国家権力によって一律に抑圧すべきものではない」という評決を発し、司法当局として、政府に対して対イスラエル政策および姿勢の再考を促すという動きです。
現時点ではメルツ政権は公式な反応は示していませんが、パレスチナ国家の樹立については言及していないものの、イスラエルによる明らかな人権侵害や非人道的な行為に対しては非難し、即時停止を要求する姿勢をより鮮明にしています。
このドイツの“変心”が、同じくG7内でイスラエルと距離を置きつつ、パレスチナ国家の樹立を明言してこなかったイタリア政府(でもレバノンにおける国連暫定軍とイタリア軍部隊に対する攻撃を行ったイスラエルには怒り心頭)の態度にも変化が見られています。
じわりじわりと欧州における対イスラエル包囲網が固まり、一枚岩の対応を取ってイスラエルに圧力をかける仕組みが完成しつつあります。
そしてその波はイスラエル外のユダヤ人コミュニティーにも広がってきています。
例えば、一応、ネタニエフ首相がポーランド系ユダヤ人であることから、ポーランド政府はこれまでシンパシーを示してきたようですが、さすがに堪忍袋の緒が切れたようで、ネタニエフ首相が法の裁きを受け、同時に即時にガザに対する蛮行を停止するように要求し始めました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、自身がユダヤ人ですが、対ロ戦争の真っただ中にありつつ、イスラエルによる蛮行には嫌悪感を示しており、イスラエルの権力層に多くのウクライナ系ユダヤ人がいるにもかかわらず、決して与せず、非難を強めています(ただし、まだプロ・イスラエルのトランプ大統領の関心を惹きつけておくために、表立った非難は控えているようですが)。
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