ついにイスラエルと断絶か?支持率急落の“逆風”にさらされた米トランプに迫られる「困難」な選択

 

退くに退けない泥沼にアメリカをはめてしまったトランプ

トランプ大統領の呼びかけでロシアのエネルギー資産(原油と天然ガス)の禁輸措置が欧米諸国とその仲間たちを中心に実施され、ロシアからの原油や天然ガスの供給が止まりそうな親ロシア諸国(セルビアなど)には表面的な影響が出始めてはいるものの、インドや中国という制裁逃れの国々が乱立しているため、その制裁の影響も限定的なものとなり、ロシアは変わらずエネルギー資源の輸出による収入を得ると同時に、アメリカ・欧州と距離を置き始めたOPEC諸国とのつながりの強化を通じて新たな経済圏を構築できるため、欧州が口先ではウクライナ支援の継続を謳いつつも、「明日は我が身」とロシアによる報復攻撃を恐れ、実質的に行動できない状況が続く限りは、ロシアとしては戦争を続け、長期化させることに対するインセンティブが維持・拡大されるしかないものと考えます。

つまり、解決の日の目を見ることがない2つの紛争調停にトランプ大統領は首を突っ込み、どれほど不可解な発言を行ってみたところで、すでに退くに退けない泥沼にアメリカをはめてしまったことになります。

欧州各国は取り残されることと面子ばかりを重んじて実質何もせず、何もできないため頼りになりませんし、目にかけてきたイスラエルのネタニエフ首相も面従腹背で、平気で自身の政治生命の延命のためにトランプ大統領の顔に泥を塗っていますし、プーチン大統領も習近平国家主席も、笑顔でトランプ大統領からの非難の矢をのらりくらりとかわし続け、結果としてアメリカの力を過剰に分散させて、実際には何も起こりえない状況を作り出すことに繋がりそうです。

ロシアは対ウクライナ戦争を継続し、ネタニエフ首相は国際社会からの非難を尻目に、「どうせ非難しても何もできないだろう」と高を括って、中東地域随一の軍事力を駆使して、勢いに乗って、“大イスラエルの実現”という宿願の達成に邁進し、アラブ諸国との隔絶による孤立の時代か、または終わることのない戦争に突入するかという選択を迫られることになるでしょう。

このような状況が続いていると、今、日本の報道では大きな話題になっている(でも中国国内を含め、さほど報じられていない)危機存立事態を巡る日中対立や米中経済対話などに関心を惹きつけつつ、来るべきアジア太平洋地域における軍事大国としての地位確立を2026年に控える中国政府は、台湾カードをチラつかさせながら、アメリカや欧州、国際社会からの関心とフォーカスを最小限に抑え込み、着々と力を蓄えていくことが中国には可能な環境が用意されることになります。

加えて、トランプ大統領の仲介の下、成立したはずのタイとカンボジアの和平合意も、ここ最近頻発する国境地帯での散発的な軍事衝突と、カンボジアが中立地帯に新たに敷設したと言われている対人地雷による被害に見舞われたタイ国軍の憤りにより、紛争が再燃しそうになってきていますし、アルメニアとアゼルバイジャンの間の確執は、今のところはまだ表出していませんが(アラートレベルではないと思われますが)、ここでも米ロアルメニアvs.トルコ・アゼルバイジャンという構図が出来てきており、何らかの偶発的な事態が起こった場合には、アルメニアがリベンジをかけ、アゼルバイジャンが勢力拡大を図るという対立が起きる可能性も否定できません。

そうなると、トランプ大統領が「就任以来、私は8つの戦争を止めた。あと1つだ」と豪語する状況が一瞬にして消え去り、制御不能な戦争状態が生じることも予想しなくてはならないでしょう。

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