自民が日程をにらみ故意に法案の作成を遅らせたとの見方も
西日本新聞は12月4日の記事で、定数削減法案に消極的な自民に業を煮やした維新の動きを伝えている。
11月27日夜、維新の遠藤敬国対委員長は、自民との交渉を担う党幹部らに“号令”をかけた。「自民に定数削減に乗られへんのやったら、企業・団体献金に関する法案にも乗らないと言え」
維新は企業・団体献金の禁止を夏の参院選でも公約に掲げていたが、自民との連立にあたってそれをあっさり取り下げ、政治献金のあり方を検討する有識者会議を設置する法案を自民と共同提出することにした。つまり自民党の生命線ともいえる企業・団体献金の存続に手を貸そうというわけだ。
しかしそれも、「議員定数削減法案提出」が前提である。企業・団体献金について助け舟を出しているのに、維新が政治改革のセンターピンとして重視している定数削減法案をないがしろにするのなら、こちらにも考えがあるというわけだ。企業・団体献金についての協力をやめるし、連立離脱もありうるという脅しである。
自民が二の足を踏んでいたのは、維新が議員定数削減法案に、実効性の担保として「1年以内に結論が出なければ自動的に比例代表を削減する」という内容を盛り込むよう迫っていたからでもあった。これでは党内の反対を抑えられないと自民党執行部が判断し、回答を保留していたのだ。
維新側の苛立ちに対応を迫られた自民は、木原稔官房長官と萩生田光一幹事長代行が30日深夜、東京・赤坂で維新の遠藤氏、藤田文武共同代表に会い、話し合った。その結果、削減対象を比例だけとしていたのを変更し、「小選挙区25、比例代表20」とする案を申し合わせた。
見方によっては、自民党が審議日程をにらんでわざと法案の作成を遅らせたとも思えるが、穿ちすぎだろうか。12月3日にこの法案を審査する自民党の会合が開かれ、「維新の言いなりでいいのか」などと反対の声が上がったにもかかわらず、すんなり加藤勝信政治制度改革本部長への一任が決まったのは、今国会では「成立」にまで至らないという見通しがついたからではないか。
維新の藤田共同代表が賛同を頼み込んだ参政党をのぞき、野党は総じて反対の姿勢だ。立憲の野田代表はテレビ番組で「基本的に賛成」と語っていたが、これは首相時代、党首討論で当時の安倍晋三・自民党総裁に議員定数削減法案可決への協力を呼びかけた経緯があるからにほかならない。「与党だけで1年とか、1割とか、そこまで勝手に決めるなよと思いますね」と批判も忘れてはいない。
日本の国会議員が多いか少ないかは議論の分かれるところだ。ろくに仕事をしていない議員が目につくときは「多すぎる」となるし、議院内閣制のお手本としている英国では下院の定数が650だと言われれば、衆院の465がさほど多いとも思えなくなってくる。
ただ、定数削減を単独で先行させるのではなく、選挙制度改革と併せて検討するべきだという意見が出るのも、もっともなことだ。最近、選挙制度改革についての議論が盛り上がっている。24年6月に選挙制度改革についての超党派議員連盟が結成され、衆院の各会派から約180人が参加。現行の小選挙区比例代表並立制を「中選挙区」あるいは「中選挙区連記制」にすべきだとする意見が自民、維新、立憲民主、国民民主、減税保守こどもの5党派から提示されている。
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