橋下徹が漏らした本音。なぜ維新は議員定数削減案など“ヤル気なし”の自民に「連立離脱」を言い出せないのか?

 

今や維新に連立を持ちかけたときの自民党ではない高市政権

維新にとって問題はここからだ。立憲の笠浩史国対委員長が自民の梶山弘志国対委員長に、動議の撤回を求めたところ、梶山氏は「伴野委員長の判断に従う」と表明したのである。浦野議員に撤回せよとは言えないが、どう扱うかは伴野委員長に任せると言うわけだ。

梶山氏は、維新の遠藤敬国対委員長との間では、「協力して法案の成立をめざそう」と励まし合っておきながら、あっさりと白旗をあげた形だ。伴野委員長が動議を取り上げるはずがなく、定数削減法案は宙に浮いたまま時間切れを待つばかりとなった。

それから間もなく、維新の中司宏幹事長は会見に応じ、法案の成立を事実上断念することを明らかにした。報告を受けた吉村代表は大阪府庁でこう語った。

「審議すらされていない。採決すべきと我々は主張しているが採決すらしない。(企業・団体献金の)結論が出ない限りは、定数削減の審議もしないということだから、やりようがない」

「やりようがない」というのは、自民を責めることはできないという意味もあるのだろうか。連立協議のさなかにテレビ番組に出演したさい「議員定数の大幅削減をこの臨時国会でやるべきだ。そこは僕、譲りません」と意気軒高に語っていたあの勢いはどこへ行ったのか。

翌日上京して高市首相に会った吉村氏は、会談後、記者団にこう話した。

「法案を審議されることなく会期の終わりを迎えることは非常に残念だ。来年の通常国会はしっかり時間があると思うので、定数削減を実現させたい」

まだ国会で継続審議になるかどうか決まらない段階だったが、吉村氏は来年の通常国会で成立をめざすと言い切った。野党はもちろん、自民党国会議員の多数が本音では反対している状況は来年になっても変わらないと思われるが、あくまでその「成立」を連立の絶対条件とし続けるつもりらしい。

維新にとって「連立」はどんな価値があるのか。創設者の1人、橋下徹氏が12月4日の「PRESIDENT Online」に寄稿した記事「気を抜けば一瞬で消滅する…それでも『維新の連立入り』を僕が評価する理由」に、興味深い一節がある。

長年続いた自公連立が解消し、自民・維新の新連立が成立、さらに初の女性首相が誕生。この展開にはワクワクしました。15年前の大阪で、わずか6人のメンバーが立ち上げた政治グループが国政の中枢で政策実現に突き進む。大阪府知事が総理大臣とタッグを組んで日本の政治を動かそうとしているんですよ!

これが、吉村代表ら維新の“大阪グループ”といわれる人たちの実感だろう。定数削減法案への自民党の不熱心さに「連立離脱だ」と怒るどころか、いざという時になって強い姿勢を封印してしまう理由がここにある。

橋下氏は維新とは無関係を装っているが、メディアやSNSなどで発信するその考え方は、間違いなく維新の“大阪グループ”に影響を及ぼしている。自民との連立に関しても、もとをただせば、橋下氏の発信が起点になっていた。

しかし今の高市自民党は、維新に連立を持ちかけたときの自民党ではない。国民民主と公明が補正予算案に賛成したことで、政権運営に自信を持ち始めている。

国民民主の玉木雄一郎代表は党首討論で「一緒に関所を越えましょう」と高市首相に言葉を合わせ、補正予算案に賛成した。まるで自民と国民民主の連立政権のように見える。自民党としては当面、維新との連立を維持しながら、国民民主など一部の野党を取り込んで政権運営をしていくつもりだろう。

むろん、高市首相が来年早々、衆院解散・総選挙に踏み切る可能性は大いにある。自民党が単独過半数を取れば、維新の立場は一気に弱くなる。連立政権が発足してもうすぐ2か月。「大阪府知事が総理大臣と日本を動かす」という陶酔感からそろそろ抜け出したほうがいいかもしれない。

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