トランプの「誤解」が発端か?米国のベネズエラ軍事侵攻をめぐる「8つの疑問点」を冷静に検証する

 

トランプが「大きな誤解」を2つ抱えているという問題

(4)スキャンダル問題

トランプ政権側の事情としては、やはり「エプスタイン・ファイル」問題があると考えられます。一旦は文書の黒塗りと写真削除をして公開し、曲がりなりにも議会の決議を履行した格好です。ですが、仮にファイルの内容の公開が続けばいつかは、「少女誘拐や暴行に関する幇助」「エプスタインの私有していた『島』への渡航歴」など、トランプ氏に関する一線を超えた内容が暴露されるかもしれません。

その場合が怖いというより、恐らくトランプ氏には「自分はスキャンダラスなことも長所」であり、「白人の劣等感を刺激する知識人オバマ」の対極にいるので票が入ると思いこんでいたのだと思います。ですが、それは2015年から16年の話であり、もう10年も昔です。10歳若返った有権者には通じないことを恐らくは理解せず、むしろ憤っている様子があります。

そんな中で、ニュースのトップを思い切り上書きするような「大きな事件」を起こし続けないと、中間選挙で負ける、そのような切迫感があった可能性は十分にあります。

(5)国内の景気と雇用

エプスタイン問題よりも、多分これが一番の大きな理由だと思いますが、経済政策についてトランプ氏自身が大きな誤解を2つしているという問題があります。

1つは、雇用統計の悪化は景気の冷却であり、早く利下げなどをしないと中間選挙までには景気と雇用が一段下げとなって窮地に陥るという「誤解」です。

もう1つは、エリート大学を壊して「配管工を育てる」のはエリートへの復讐になる、つまりイデオロギー的なキャンペーンという「誤解」です。

実際に政権がやっていることは、まず、先端産業も含めて連邦(国)による大学への補助金は絞り、逆に規制緩和によって民間による技術革新の後押しをするという政策です。そうすると、結果的にAIの技術革新が進み、大卒者向けの知的初級職が少なくなったら、大卒人材はロボット化された製造業などの「新しいブルーカラー」として期待されるわけです。

関税政策による製造業回帰は更にこの動きを加速させます。多少粗っぽい言い方になりますが、トランプ氏の政策、つまりグローバリズムを否定して、エリート大学を批判するという姿勢、AIは民間活力で推進という政策は、実は辻褄が合っているのです。

もっと言えば、そのように政策が回っているから、AIで代替の効くホワイトカラーの職がどんどん減っているだけで、景気は堅調なのです。ですから、経済政策については、もっと胸を張って良いとも考えられます。また、だからこそ、プロ中のプロである連銀のパウエル議長は利下げに慎重なのです。

ですが、その肝心の点に自分が気づいておらず、景気と雇用が悪化したら選挙に負ける、だから大事件でニュースを埋め尽くさねば、という切迫感に追い詰められているのかもしれません。だとしたら、こちらの方が問題だと思います。

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