トランプの術中にハマったルビオ国務長官のジレンマ
(6)何故ロドリゲスなのか、マチャドでない理由
ノーベル平和賞を受賞したマチャドは、人気がないからコマとして使えない、トランプ氏はそう宣言しています。一方で、現職副大統領で、マドゥロの忠実な部下であったロドリゲスには、恐らく非常に強い圧力を加えて黙らせて利用するように見えます。
確かにマチャドは日本的な表現で言えば「新自由主義」ですから、長年のバラマキ政権に慣れたベネズエラ世論からは人気はないのは事実です。一方で、マドゥロの腹心だったロドリゲスは、とりあえず多少は抵抗するものの、米国の傀儡となっても世論との接点にはなるかもしれません。
ここからは希望的観測ですが、まずロドリゲスを使って「改革の痛みの部分を現実化」すると、ロドリゲスは人望を失います。また愛国主義的な観点からもアメリカに屈服した存在に見えますから人気は低下するでしょう。
そこでサッチャー並の改革を掲げたマチャドを出せば、彼女は繁栄への希望と独立独歩の姿勢をアピールできることになります。そうなれば、構造改革と自由経済、小さな政府論のマチャドを国民自身が選んだ格好となります。
しかし、現政権のような「異文化である他国世論の根底」への理解をする姿勢に欠けた集団には、そのような軍略は思いつかないでしょう。せいぜい、人気のあるなしと、言うことを聞くかどうか、といった「アメリカの世論にも分かるストーリー」で動いているのだと思います。
あるいは、マチャドにはヒラリー・クリントンのような優等生的な匂いを感じて嫌っているのかもしれません。だとしたら、この時間のかかる国家再生については成功は覚束ないと思われ、暗い気分になります。
(7)政治的ライバル、ルビオ、ステファニクへの影響
アメリカ国内政治の力学ということでは、今回のような行動に進むことで、他の政治家について大きな影響を与えることは、可能は可能です。例えば、仮にベネズエラ情勢について、当面は「成功する」ことができれば、国際法違反などを理由に作戦を批判した民主党政治家を不人気化することは可能でしょう。
もっと具体的な例としては共和党内の締付けに使うこともできます。例えば、リンゼー・グラハム上院議員、ジム・ジョーダン下院議員といった共和党のクラシックな保守派に関しては、早速支持を取り付けています。この場合の支持というのは、一種の屈服になります。
最大の焦点は、マルコ・ルビオ国務長官だと思います。自身が亡命キューバ系の二世であり、ある意味ではラテン系の「名誉」に傷をつけるような今回の行動については抵抗感を持っていたとしても不思議はありません。ですが、今回は、ほぼ完全にそのルビオ氏に「当事者」として政権を代表させることに成功しました。これで、国務長官としては「常識的な外交」はできなくなるわけで、術中にハマった格好です。
年末になりますが、大物下院議員でNY知事選への転出準備に入っていたエリス・ステファニク議員(NY州西北部選出)が、知事選立候補を断念して議員再選も求めないという声明を出しました。ここまで必死にMAGA的言動を続けてきたにもかかわらず、トランプ氏の信認が得られなかったという話ですが、もしかしたらエプスタイン問題に加えてベネズエラ問題も対立要因であった可能性があります。
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