もちろん、米国が主張する「麻薬密輸組織からの自衛」や「マドゥロ政権の排除」が「自衛権の行使」に該当すると解釈する国際法専門家なんか、いるわけがない。
国連の安全保障理事会は5日に緊急会合を開いた。
会合ではアントニオ・グテレス事務総長の「国際法が尊重されなかったことを深く懸念している」との声明が読み上げられた。
米国大使は「彼は非合法な大統領であり、国家元首ではなかった」と攻撃を正当化。 対してベネズエラ大使は「国連憲章に対する米国政府の明白な違反だ」と非難した上で、「国家元首の拉致や主権国家への爆撃が容認されるのであれば、武力こそが国際関係の真の仲裁者であるという(誤った)メッセージを世界に送る」と警告した。
会合では「ベネズエラの次」を恐れるコロンビア、パナマ、ブラジルなど中南米諸国や、グリーンランドを領有するデンマーク、さらにイランなどが批判の声を挙げた。
さらに常任理事国では中国が「米国の行動は国際法と国連憲章に違反する」と批判。 ロシアが「法の支配を無視した行為」として厳しく非難した。 お前らが言うなとも言いたくなるが、会合ではアメリカに国際法・国連憲章に基づく行動を求める国が多数となった。 ただ、ヨーロッパでは国によって対応に温度差がある。
しかしいずれにせよ、アメリカが拒否権を持つ常任理事国である以上、国連が何もできないことは既に明白である。
一方、日本政府は対応に苦慮している。 日米同盟に頼り切っている以上、アメリカを非難することはできない。 だがこれを支持してしまったら、中国が口実を作って台湾に侵攻し、台湾総統を拘束して連れ去ってもいいというメッセージにもなりかねないと、外務省は懸念しているらしい。
そんなわけで日本政府は攻撃の是非について触れることを避け、「邦人の安全確保」と「ベネズエラにおける民主主義の回復及び情勢の安定化に向けた外交努力」を進めると表明するに留めている。
高市早苗も今回はさすがに外務省の言うことをよく聞いて、「あいまい戦略」に徹することにしたようだ。
さらに微妙なのはウクライナのゼレンスキー大統領で、アメリカの支援が絶対に必要な立場で、アメリカの非難はできない。 そこで「独裁者に対してあのような対処ができるのであれば、米国は次に何をすべきか分かっている」と発言し、暗に「次は同様にプーチンを拘束すべきだ」と示唆した。
トランプがそんなことをするはずがないことくらい、ゼレンスキーがわからないはずもなく、これは精いっぱいの皮肉のようにも聞こえる。
そもそもトランプという人間は、国際法どころか自国の国内法ですら、何とも思っていない。
トランプは議会を無視して大統領令を乱発しているが、それらを違憲とする判決が、連邦地裁や高裁レベルで出始めている。
いわゆる「トランプ関税」についても、一審に当たる国際貿易裁判所と、二審の連邦控裁が次々に違法と判断し、今年は連邦最高裁の判断も下される。
しかしトランプはいくら「違憲」という司法判断を下されても全く意に介さず、控訴審で争い続けている。 この先、連邦最高裁が「違憲」の最終判断を下したとしても「司法の横暴だ!」と裁判所を非難して従わないこともありうるし、そうなればトランプ支持者が大騒ぎし始めるのは間違いなく、裁判所を襲撃したっておかしくない。
しかも連邦最高裁には保守派の判事が多数送り込まれているため、どんなに法的に無理があろうと、どんなに司法が信頼を失うことになろうと、「合憲」の判決を下してしまう可能性だってあるのだ。
トランプは自分の利益のことしか考えない。 議会も司法も知ったこっちゃない。 どこまでも私的な感覚のみでルールを決められると思っていて、法治主義そのものをクソ食らえとしか思っていないのである。
いくらなんでも、こんな恣意的なルール感覚がまかり通ってしまったら、大変だということくらいは誰にでもわかるだろう。
人類には歴史に基いた秩序感覚というものがあり、それが慣習法として積み重なっていき、「法の支配」というものが確立してきた。 それは尊重しなければならないということは、認めざるを得ないのである。
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