外交についても透けて見える同じような二重構造
行政官としては当然ですが、大衆政治家としては、この手法はミステイクということになる時代です。案の定、岸田氏は最後は消え入るように権力を喪失しました。こうした道を繰り返さないというのは、高市氏の固い決意となっていると思われます。
つまり、高市政権というのは二重構造になっているわけです。表面には積極財政論があり、消費減税だとか国土強靭化などが並べてあります。ですが、その裏には「国家の非常事態」が隠されており、ギリギリのところでの財政規律を守っていく固い決意のようなものがあると考えられます。
実は、売り物の外交についても、同じような二重構造が透けて見えます。対中関係悪化の原因となった「存立事態」という言明ですが、勿論、そこには「自衛隊が人民解放軍に攻撃を仕掛ける」という意味合いは「ゼロ」であることは明白です。そうではなくて、台湾海峡封鎖という事態においては、在沖海兵隊への先制攻撃や、第七艦隊への挑発行動の危険は増大します。
これは日本にとっては危険になるので困るし、そこまで事態が悪化するのは避けたい、抑止したいというのが発言の趣旨です。また、背景にある思想としては自由と民主主義のエリアを死守するという大義があるはずです。これをしっかり述べるなどとして、もっと胸を張る、少なくとも日本軍国主義の復活というのは全くのデマだとすることは必要だし可能だと思います。
ですが、高市政権は中国外交の口舌による挑発については、喧嘩を買った格好を見せています。例えば敵国条項を盾にした恫喝に関しては、日本は国際秩序を乱す行動はしないと胸を張ればいいのです。ですが、わざわざ敵国条項の無効化の話で反論するなど、完全に売られた喧嘩は買うモードです。
しかし、ここにも二重性はあります。日本と中国の経済関係を考慮すると、この状態を放置はできません。日本から中国への輸出を変更して、例えばスマホの部品や素材を中国に売るのではなく、自前で組み立てまでやろうとすると、巨大な数の「英語のできる理系人材」が必要になります。ですから逆立ちしても現在の日本では不可能です。自動車エンジンも同じで、複雑化したロボットマシンのオペレーターは大量には日本では用意できません。
インバウンド観光も同様です。中国からの観光客の減少は、直接的に地域経済にダメージを与えます。試しに今年は春節は2月17日ですが、この日の京都のビジホの料金をサーチすると、悲惨な数字しか出てきません。欧米系向けの外資系や、超富裕層向けは予約が入っているのですが、中国団体客向けのビジホのツインルームに関しては壊滅状態です。こちらも暖かくなる季節までに、何とかしないとという時間を限った問題となっています。
政権政党としては、全国各地の商工会議所を通じてこうした問題は時々刻々と入ってきているのだと思います。ということは、強気の「一見するとタカ派」の姿勢をいつまでも続けるわけには行きません。
この2つの問題、つまり積極財政か財政規律かという問題、対中強硬か、現実に基づいた軟化かという問題、これによって成立している二重構造政権というのは、実は見せ方として成立するのは「今だけ」とも考えられます。
中国との経済交流については、永遠に抑えることはできず、引っ張れば引っ張るほど、兵糧攻めで日本のダメージは大きくなります。また、財政に関しては、予算審議を進めてゆけば、責任与党としては「財源」を示差なくてはならなくなります。ですから、解散としては「今」しかない、つまり予算審議を行う通常国会の冒頭で解散するしかないということになります。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ









