解散総選挙の背景にあると考えられる「外交日程」
勿論、政治手法としては全くの邪道ですが、このタイミングであれば、大衆政治家の行動としては辛うじて成立する話です。予算にしても、外交にしても選挙に勝った後にもっと有利に進めるための手段の問題とも言えます。
もっと言えば、玄人有権者向けにはこの「二重構造を政治手法とする」という内閣の姿勢を堂々と問う選挙ということになるかもしれません。邪道かといえば、本当に邪道なのですが、そうでもしないと2つの矛盾した構造、つまり
「直近の生活水準を切り下げるのというのでは怒りを買って政権が不成立」
「財政規律を更に緩めれば、通貨への信認も国債への信用も崩壊」
「対中強硬姿勢を簡単に緩めてしまえば、媚中派と言われてより悪質な右派ポピュリストの台頭を招く」
「輸出入の相手として中国経済抜きには日本の経済水準は成立しない」
という構造の中では、年初解散を成功させて政権求心力を維持することが必要と考えた、ということは理解可能と思われます。
2つ目は、対米外交です。高市氏は、とりあえずトランプ大統領との首脳会談は無難にこなしています。その一方で、3月には訪米という外交日程がセットされているようです。そして、今のところ日米間には喫緊の課題というものはありません。通商問題に関しては石破内閣が、大変な思いをして懸案を着地させた後ということもあります。
3月の訪米ですが、これは非常に絶妙なタイミングになります。まず3月初旬には中国で全人代が行われます。ここで李強首相の経済報告、目標や五カ年計画の発表があります。向こう5年間の中国の動向について方向性が示されるのです。そのうえで、4月にはトランプ訪中が決まっています。
高市訪米は、そのちょうど間にセットされているわけです。米中が今後どのように共存するのか、トランプ訪中の前に説明を受けて討議する場が設けられることになります。これは重要なことです。
一方で、2期目のトランプ外交は年明け以降、更に不確実性を増しています。ベネズエラの一件、グリーンランドの一件ともに、従来の国際法や国際秩序を動揺させるわけで、仮に日本が巻き込まれた場合には非常に困ったことになります。ですが、幸いにベネズエラに関する「出資要請」は政治的には出ていませんし、グリーンランドに関する「踏み絵」を踏まされる様子もありません。
ということは、これから1ヶ月間、高市総理は対米外交について、当面「頭を悩ませる」ことはないわけです。問題があるとしたら、一部野党からの「ベネズエラの件、グリーンランドの件で日本は正義の立場から反対すべき」というような政治的には意味の薄い「挑発」をされるケースです。
今回の選挙については、非常に興味深いのですが「対米外交」は争点から外れていますし、争点になる可能性はありません。あるとしたら、「自分たちならもっと巧妙にできる」的な交渉力の問題で、民意を揺さぶるということぐらいです。ですが、とりあえずこの点では自民党には一日の長があるわけで、恐らく争点にはならないでしょう。
ということは、この時点で内閣の信認を問う、その上で国民の信を得て3月の日米首脳会談をやり、米中の何らかの合意を見て日中関係も修復するというのが、政権側のストーリーになると思います。そして、この手順に大きな異論は出ないのではないかと思われます。そう考えると、こうした外交日程も解散総選挙の背景にあると考えられます。
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