世界は「脱米国」へと踏み出したのか?カナダとイギリス両首相の“訪中”が映し出す「米覇権時代の終焉」

 

明らかに「脱アメリカ」の一歩を踏み出した国際社会

昨年のアルバジーニ首相に続き、今年はカナダとイギリスの首相が相次いで中国を訪れた。これを「中国シフト」と呼ぶべきかと問われれば、必ずしもそうではないと思うが、脱米か否かと問われれば、世界は明らかにその一歩を踏み出したといわざるを得ない。

象徴的であったのはベルギーのバルト・デウェーフェル首相のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)での発言だ。

米誌『THE HILL』は、デウェーフェルの発言を記事の中で以下のように伝えている。

「これまで私たちはホワイトハウスの新大統領をなだめるよう努めてきた」とデウェーフェル氏は述べた。「私たちは関税についても非常に寛大で、ウクライナ戦争に対する彼の支持も得たいと願ってきた」。

「我々は当時、非常に悪い立場にあり、米国に依存していたため、寛大である道を選んだ。しかし多くのレッドラインを踏み越えられ、いま自尊心を守るかどうかの選択を迫られている」。「幸せな乗船者であることと、惨めな奴隷であることは違う。いま引き下がれば、尊厳を失うことになるだろう。そして、民主主義において、尊厳はおそらく最も貴重なものだ」。

なかなか思いつめた発言で、カナダのカーニーの呼びかけにも重なる内容だ。

一方の中国は、こうした国々の不満を糾合して反米勢力を結集しようとしているのか。答えは明らかに「ノー」だ。

中国の謝鋒駐米大使は「中国は中米関係を発展させようという誠意はあるが、原則も重んじる。主権の安全と発展の利益を守るという重要問題において、いささかも妥協の余地はない」と述べている。

関係よりも原則重視なのだ。

対米関係を重視していても、アメリカがベネズエラに対し軍事行動をとれば中国は非難するのである。

そんな中国はいま、紛争や対立を話し合いで解決できる国という実績づくりに躍起である。直近の典型的なケースとして対韓国外交での譲歩がある。

中国は李在明大統領との首脳会談の後、突如、「中国が無断で黄海に設置した構造物」と韓国が非難してきた「構造物」を移動して話題を呼んだ。

明らかに中国側の妥協であり、それを中国政府も認めている。

中国のこの動きは、たまたまトランプ政権が韓国に対し関税を上乗せしたタイミングとも重なったことで、「中国による韓国取り込み戦略」とも疑われだが、むしろ中国の狙いは世界だ。「話し合いのできる国とのイメージ」と世界にアピールすることに向けられている。

それにしても、こうしたチャンスをきっちりものにする李在明外交も、なかなか強かである。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年2月1日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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