非常に興味深い「消費税12%論」のストーリー
では、どうしたらいいのかというと、とにかく通貨と金利を鎮静化しなくてはなりません。ドル円で160円ではダメでもう少し円高に振るにしても、限界は150円。その範囲で落ち着かせることで、債券も戻してゆく、これが必要です。そうなると、減税は「しない」か、あるいは「小規模にして財源を示す」しかありません。
今回の選挙は、そのような「日本が瞬殺されないための狭いゾーン」に、政治を持っていくための壮大なドラマであると思います。壮大というのは、選挙公約としては国民に対して一言も「財政規律が大事」とは言わないで、何とか選挙に勝利して「生存ゾーン内」に為替と金利を持っていくということです。
この政治のメカニズムは、全体が国民に対する嘘であり、裏切りですが、政権としては他にやりようがなかったのだと思います。政府の予算審議と企業決算が重なる時期だからこそのメカニズムがそこにはあるからです。では、政府は正直になればいいのかというと、
「円安でないと多国籍企業の業績も株価も維持できない」
という話であれば、まだ多くの人が理解するとは思います。ですが、
「債券の金利が上がると債券の価値は下がり、保有者は減損処理が必要」
という話になると、メカニズムを理解する人は一気に少なくなります。そんな中で、全世界がポピュリズム的な政治や言動が溢れているわけですから、政治がこのような「与野党の全員が減税を主張しているが、おそらく全員が不可能なことを知っている」というメチャクチャな状況になっているわけです。
そんな中で、ここ数日出てきた「消費税12%論」などは非常に興味深いものです。ストーリーとして、「食料品を2年間消費税ゼロにする代わり、その財源として」なのだと思いますが、「2026年度中に食料品をゼロにする代わり、ほかは12%にする」のか「2028年に全て12%にする」のかは分かりません。
言い出したのが財務省であるのかも分かりませんし、もしかしたら自民党に不利な情報として野党側が流した可能性もあります。市場の反応を見るためのアドバルーンだという可能性も否定できません。
いずれにしても、今回の総選挙のメカニズムとしては、安全保障上の危機感を煽って選挙に勝って、その勢いで国民に何らかの負担を呑ませて、3月末までに「円相場の安定、金利の低下」を実現する、というのがストーリーと思います。
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