エプスタイン疑惑とイラン空爆という奇妙な符合
戦争を始める時に一番大事なのは「獲得すべき目標」は何かを明確にすることであり、それを欠くと必ず果てしもない戦力投入による泥沼化に陥って、結局は惨めな敗北に至る。第2次大戦のドイツも日本も「世界制覇」「アジア支配」といった誇大妄想に走って破滅し、その後も米国がベトナム、アフガニスタン、イラクで同様の過ちを重ね、今またイランでもっと酷い無謀な戦争を起こして早くも出口が見えない迷走状態に突入しつつある。
どうしてこのような愚行が繰り返されるのか。1つの分かりやすい解説は、エプスタイン疑惑の解明が進むにつれ、トランプがエプスタインと共に13~15歳の少女を弄んだ事実を示す証拠が出てくるのではないかと噂される中、それから世間の目を逸らさせ何とか掻き消そうとしたのではないかという、米国内で行き渡っている話である。
実際、2月26~27両日にヒラリー&ビル・クリントン夫妻が連邦下院監視委員会に呼ばれ、自分らには隠すべきものは何もなく、それよりも文書に何度も名前が出てくると言われるトランプをこの場に呼んで宣誓証言させるべきだろうと言った。その翌日にトランプはイラン爆撃に踏み切った。
これには既視感がある。そのビル・クリントンが現役大統領当時の1998年、ホワイトハウスのインターンだったモニカという女性と“オフィス・ラブ”の関係にあったことが暴露され散々逃げ回ったものの追い詰められて同年8月17日に彼女との関係を「適切でなかった」と認める声明を発表、その3日後にアフガニスタンのアルカイーダ基地とスーダンの製薬工場に対するミサイル攻撃を敢行した。
スーダンの工場はアルカイーダの秘密兵器工場だと断定しての爆撃だったが、これは全くの間違いで、貧しい同国の特に子供らに必要な薬品を供給する大事な施設だったことが後に明らかにされた。また同年12月に米下院で大統領弾劾決議案の審議が始まるタイミングで、クリントンはイラクに対する「砂漠の狐」作戦を発動し、大量破壊兵器関連と認定した施設を3日間に渡り空爆した。
しかもこうしたクリントンの行動は、その直前に封切りされていたコメディ映画『Wag the Dog(尻尾が犬を振る)』で現職大統領がセックス・スキャンダルを隠すためにアルバニアを敵国に仕立てて戦争を始めるという話と余りにそっくりだったので、その面からも揶揄的に話題となった。
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