円高誘導の思惑と海外投資が動くという日本市場の落とし穴
ですが、日本の場合は円高ドル安に思いっきり振りたいという願望は、政権の側にはあると思います。何度も申し上げていますが、高市政権としては「3月中の円高だけは止めて欲しい」ということで、前回の訪米も含めて様々な交渉を水面下で行って食い止めてきたと見ています。円高になれば企業業績が吹き飛ぶからですが、仮に3月中という期限を切って懇願していた場合は、4月から円高に飛ぶ危険性はあるわけです。
トランプ政権としては、とにかく「輸入」を止めたいし、これを罰するようなこともやりたい、円高ドル安はそのための手段として有効というわけです。更に、対米投資をどんどん引き込みたいし、そのためにも大いにプラスと考えていると思います。中国との関係でこれをやるのは難しいし、ユーロなどは複雑で非常に難しいわけです。更に全世界の中でドルだけを安くすると、いくらエネルギーの自給が可能だと言っても、中東情勢の中で立場は悪くなります。
ですから、日本円を「スケープゴート」として、一種の政治的、象徴的な思惑として思い切り高値に誘導したい、政権としてはそんな思惑はあるはずです。更にもう一つ政権の可能性としては、現在の中東情勢に関して、思い切り激しい対応に突っ込む場合が考えられます。
仮にこのままイランの体制が動揺しないし、ミサイルやドローンによるイスラエル、レバノン、そして湾岸への攻撃も止まない、その場合に米国が最悪の選択肢である地上軍派遣をしたとします。そして、カーグ島だけでなくイラン国内に入って複雑な山岳地形の中に誘導されて泥沼化、更には絶望的な戦況へと陥ったとします。そうした場合に、ドルが叩き売られ、これに対して円が買われるというシナリオは成立します。
裏返しで考えると、トランプ政権が政治的に円高誘導をやるか、イラン情勢でアメリカが窮地に陥るという場合「以外」は、基本的に円安の可能性が高く、円高の可能性は低いと考えていいでしょう。それはともかく、円高になれば、原油をはじめエネルギーの輸入コストは下がります。また、小麦や大豆などの食料品、建設資材なども下がります。多国籍企業の業績は円に倒せば下がりますが、本決算までは時間があります。
ということで、日本経済としては多少の円高は許容できるし、例えば安倍政権当時の120円という水準ならメリットを中心に考えても良さそうに見えます。ですが、ここに大きな落とし穴があるのです。それは、今、怒涛のように日本に入ってきている投資が「動く」という可能性です。
まず一般論として、アメリカの年金ファンドや、中国の富裕層投資もそうですが、世界のマネーがどうして「自国ではなくて外国に投資するのか?」というと、それは「ボラを取りに行っているから」です。ボラ(ボラティリティ)というのは、変動の激しさということです。では、どうして外国投資はボラが激しいのかというと、株も不動産も上がったり下がったりするのに加えて、為替変動が乗っかるからです。
例えば、アメリカの機関投資家が日本株に投資するとします。その際には、まず内容がしっかりしていて、収益率は低くても堅実で潰れそうにないものが選ばれます。もしも割安感があればより良いわけです。その上で、今は円安なので更に割安感が乗ります。そこから先ですが、企業の業績が上がれば株は上げ、下がれば株価は下落します。
これに加えて円安になればドル建ての株価は下がります。下がったとしても、より割安感があるという場合は、そこで買い増しをすることになります。不動産も同じです。様々な観点から見て割安感があるから買いますし、その後、円安になっても、割安感があれば買い増しをします。現在地はここです。
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