トランプの“思惑”と高市の“ジレンマ”。新年度早々に円高誘導と円安進行が同時に迫る「日本経済の不安定構造」

 

「誰の目にも明らか」になりかねない日本経済の実力低下

そうは言っても、円高シナリオの成立する可能性は低く、どう考えても円安シナリオの方が可能性としては見ておく必要があると思います。年度末の160円から、新年度にはどんな方向感が出てくるのか、基本は円安の勢いということを見て考える必要があります。

現在の円安ですが、仮に「日本が利上げができない」一方で、「アメリカでは大統領が望む一方で連銀(FRB)が利下げをしない」中で、日米の金利差が縮まらない、これが原因だとされています。つまり、そのため日本円に投資するよりドルのほうが有利としてドル高が続くからという説明です。

更には、今は戦時ですから、戦時というのは世界一の軍事大国の通貨であり、また基軸通貨であることから「戦時のドル買い」が起きているのだという説明がされています。この2つの説明、つまり「金利差」と「戦時のドル買い」というのが本当ならまだ良いのです。

ですが、新年度に警戒しなくてはならないのは、「そうではない」ということです。そうした特殊要因ではなくて、完全に日本経済の実力が下がったことで、円安が続くということが、もしかしたらある時点で「誰の目にも明らか」になるということです。新年度に警戒しなくてはならないのは、この点です。

既に兆候はあります。年度末の数日間に、40年物の超長期国債金利は再び上昇をはじめて、ほぼ4%の水準になっています。財政規律が緩んでおり、財政悪化が避けられないというだけでなく、これにイラン情勢が重なった結果と見ることができます。

現時点では、原油高を反映したガソリンの価格上昇に対しては、補助金をドンドン出す方向になっています。ですが、これは財政悪化を招くだけでなく、弊害の大きいレベルまで購買力を上げ(維持)してしまうので、インフレを招きかねません。そうすると、財政悪化とインフレの悪循環になるわけです。

市場はこれを嫌って国債を売って国債金利の上昇を招いているわけです。こうしたトレンドが本格化すると、やがて金利を上げて「日米の金利差」を圧縮しても、円高に振れないとか、「余計に円が売られる」という状況に陥ります。ちなみに、日銀の植田総裁と片山財務相は、少し以前までは160円に接近すると大規模介入もしくは口先介入をしていました。

ですが、現時点ではそうした行動に出ていません。年度末なので、企業決算を考えて円安を許容しているからだと思います。ですが、仮に年度が替わっても介入をしないとなると、そこには一つの懸念を感じます。それは、もしかしたら日銀と財務省が「介入しても市場が反応しない」と恐れているか、または「介入にアメリカが協調してくれない」という懸念です。

そうなると「昨年度までは160円で介入していたのに、新年度はもうしない」というのが日本政府の姿勢だということになり、市場からは「更にナメられる」という可能性もあります。

ちなみに、アメリカの政局や中東情勢との関連で言えば、トランプ下野とか、対イラン完全停戦という場合は、日本経済にもプラスになるように見えます。ですが、仮にそうした形で、アメリカの経済社会が180度の転換を始めた場合には、全世界がドル買いに回る、となると結果的に円安へと押し出される危険もあり、一筋縄では行かないと思います。

さらに言えば、不況下でインフレだけが進行するスタグフレーションに陥るという可能性もあります。と言いますか、現状は既にそうなっているとも言えます。とにかく、新年度の日本は2つのスパイラルを警戒すべきです。

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