否定できない日本発の「第2のリーマンショック」の発生
ということで、現地通貨建ての価格の上下に、ドル円相場の上下が「掛け算で」かかってくるわけです。現地通貨ベースならプラマイ20%の話が、仮に通貨の振れ幅がプラマイ20%乗るということですと、全体のプラマイをドルで見ていると、プラマイ44%になる計算です(1.20の2乗になるので)。では、どうしてそんなリスクのある投資をしているのかというと、そうでないと面白くないからです。
というのはウソで、投資というのは多様な対象に分散するのがセオリーです。低リスクのものばかりに投資していては、全体の仕上がりも低リターンにしかなりません。ですから、低リスクのもの、ハイリスクのものを様々に混ぜて、全体的にYTD(年率)で5%とか強気の場合は7%とかを狙う、これが当たり前の投資であり、日本の株や不動産はその「ハイリスク」つまり、ボラを期待しての投資になるわけです。
ちなみに、株価と為替のダブルで掛け算などというのは面倒なので、アメリカ人としてはアメリカ国内のハイリスクなベンチャー株に投資した方が身近だし、分かりやすいという考え方もあると思います。ですが、その場合は40%上がる確率もあれば40%下がる確率もあるだけでなく、会社が一夜にして飛んで価値がゼロになるリスクもあるのです。これは非常に危険です。ベンチャー株だけでなく、クリプト(暗号資産)などもそうです。
一方で日本の株や、東京の不動産が一夜にしてゼロになるという可能性はほぼ無視できる範囲です。そのくせ、投資家からすれば海外の案件ですから、価格の上げ下げに為替の上がり下がりが掛け算される「妙味」があるというわけです。
もうお分かりでしょう。ということは、仮にトランプ政権の政策などの理由で、あるいは高市政権が倒れたとか、突然日本が財政規律のために超行革を始めたなどの際に、一気に円高に振れたとします。その場合ですが、海外の投資家はこう考えるでしょう。それは「これは沈みゆく日本経済を反映した日本円の最後の輝きだ」という判断です。同時に彼らは改めて直感的に思うでしょう。「この時を待っていたんだ」という直感です。
この時点で、不動産にしても株にしてもドル建てでは、初期投資に対してかなりの利益が出ているとします。そうなれば、「今こそ最後のチャンス」だとして「今こそ利益を確定させよう」という結論になるのは、ほぼ瞬間的な判断になります。そうなれば、あれほど社会を揺るがせていた外国人による不動産バブルは一気に吹き飛ぶことになります。
日本株については、仮に業績の過半が海外で、ドルベースの企業価値があるものは大丈夫でしょうが、日本国内中心にビジネスをしている企業の株は、やはり円高でドルベースの価値が膨張したところで、叩き売りに会う可能性があります。
日本の不動産は明らかにバブル化しています。現在は東京23区内でしたら、賃貸に出したらほぼ借り手がつかない水準まで上がっていますし、パワーカップルが夫婦でローン組む場合に、35年とか、最悪50年などという絶望的なものまで登場しています。つまり実用的な価値としては限界を超えているわけで、その超過部分は明らかにバブルです。
仮に円高が実現した場合には、そのバブル分が吹き飛ぶだけでなく、バブルが崩壊する際の激しい勢いで一気に下落が始まると考えたほうが良いと思います。これは本当に恐ろしいことで、とにかく「海外投資家が利益確定の売りを出す」ということのインパクトに対しては警戒を続ける必要があります。ですから、企業業績には影響の少ない「上期の短期間」なら円高の弊害はないなどということは、言えないのです。
これに加えて、実は不動産バブルというのは全世界で起きています。いち早くバブルの弾けた中国はまだ良いとも言える中で、仮に日本発で大規模な不動産バブルの崩壊が起きた場合には、これはアメリカに連鎖する可能性があります。そうなると、ノンバンクを中心に金融危機が起きて、リーマンショックの再発になる可能性も否定できません。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ









