相当な乱気流にさらされること必至の新年度の日本経済
1つは小さなスパイラルで、「原油高になる」プラス「円安で余計に原油高」になる中で、「ガソリン価格などには補助金を出す」ことで発生します。つまり、そうした補助金を出すことが「世界の投資家からは財政規律がユルユルに見える」こととなり、更に「円が下がる」というものです。
もう1つはもっと恐ろしいスパイラルで、「円安になる」と日本円、そして日本経済への信認が下がる、すると「国債が売られて金利が上がる」というものです。そのようなモメンタムが回る中では、「貸し出し金利を上げると、国債金利に連動していると思われ」余計に円の価値が低く見られる。そこで「円はさらに下がり」連動して「国債が売られる」というスパイラルです。
これが、もう止められなくなると、最後にはハイパーインフレになってしまいます。資産の海外流失が始まり、これに対する規制が発動するという中では、失敗国家へと階段を降りていくしかなくなります。勿論、日本経済はまだまだ大きな規模を持っているので、アルゼンチンやギリシャのようには簡単にはなりません。
ですが、円が思い切り安くなれば、「多国籍企業に関係している人と、国内産業だけの人の格差が加速度的に拡大」「頼んでも日本に来る労働者は減り、その質がドンドン下がる」「最後には治安が徐々に悪化していく」といった悲劇が展開されるようになります。
円高シナリオでは「不動産と株の利益確定の売り」を警戒すべきですが、この円安シナリオの場合は最後には「不動産と株の損切りの投げ売り」という現象も警戒しなくてはなりません。こうした円安シナリオの悲劇は、勿論、半期とか1年でやってくるわけではありません。ですが、その兆候が出た場合に、そしてその兆候がたとえ遅くても反転の気配のない場合は、相当な覚悟が必要になります。
ということで、円高も円安も過度に振れるようでは、日本経済には破滅的な影響が出てしまいます。先程申し上げた「140円から160円」というボックス圏の内側に、何としてもドル円を留めておくことが必要です。
そうして時間を稼いでいる間に、DX化、正しいAI利用、低付加価値事務職を高度職人や専門職へ転換するリスキリング、高度製造業を回帰させるための人材育成など、「痛みを伴う改革」を実現しなくてはなりません。最後の「製造業向け人材」ですが、定義はハッキリしています。それは「英語のできる理系人材」です。
いずれにしても、新年度の日本経済は相当な乱気流にさらされることを覚悟した方が良さそうです。投資家やビジネス関係者の皆さまを中心に、「バックル・アップ」つまり「シートベルトを堅く締める」ことを強くお勧めします。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年3月31日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「学びに向かう姿勢を評価、教育行政の迷走とは?」や<不定期連載、時空の声>の「MET公演、『トリスタンとイゾルデ』」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。
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