3時48分から50分近くにわたり開かれていた「重要な会議」
実はこの日、高市首相は超多忙な日程だった。午前中はマレーシアのアンワル首相やマーシャル諸島のハイネ大統領との電話会談をこなし、午後からは自民党関係者の来訪を受けたあと、3時48分から50分近くにわたり外務省、防衛省の幹部たちとの会議を開いていた。
その出席者は、市川恵一国家安全保障局長、外務省の船越健裕事務次官、金井正彰アジア大洋州局長、宮本新吾南部アジア部長、熊谷直樹北米局長、岩本桂一中東アフリカ局長、防衛省の萬浪学防衛政策局長といった顔ぶれだった。
まさに、この国の外交・防衛の中枢部が集結した重要な会議だった。おそらく、「24日夜」というのは、「政府関係者」を特定されないようにするためであって、実のところは「24日夕」のこの会議の席で、高市首相の「羽交い締めにされた」発言があったのではないだろうか。
議題はまさに、日米関係、イラン問題が中心だったはずだ。もしここで、高市首相が自衛隊派遣に積極的な持論を語れば、なぜそれを断念したかを説明する文脈の中で、今井氏の名が出るのは、不思議でもなんでもない。
今の時点で「切るつもりでいる」と人事にまで踏み込むのは、手練れの政治家らしくないが、事実だとすればよほど「気分」をコントロールできない状況だったといえるだろう。
ともあれ、高市氏の激高ぶりを目にした外務・防衛官僚たちは、これをどう受け止めただろうか。米国・イスラエルによるイラン攻撃は国際法上の正当性に疑義があるのは言うまでもない。日本の法律上、自衛隊の派遣は「停戦後」であることが大前提だ。戦闘が継続し、機雷が現在進行形で撒かれている海域に自衛隊を送り込むことは、現行法を逸脱した「武力行使」と見なされる可能性が極めて高い。
外務省の条約局などは、「法的根拠が曖昧な軍事行動に日本が加担すれば、将来的に国際社会での信頼を失う」と強く警告している。「高市外交は危険すぎる」というのが外務省主流派の共通認識ではないだろうか。
防衛省でも本音では「法的裏付けと十分な武器使用権限がないまま、戦闘海域に行かされてたまるか」という思いがある。
今井氏が高市首相に向かって浴びせた「どうなるかわかっているだろうな!」という言葉の底には、霞が関の共通認識をもとに、下手をすれば憲法違反で内閣総辞職に追い込まれかねないという深い懸念が渦巻いていたはずだ。
外務官僚たちが、今井氏の「羽交い締め」を肯定し、それに対する高市氏の「怒り」に、今後の外交防衛政策をめぐる危機感を抱いたのは想像に難くない。
この『選択』の記事を書いた記者はおそらく、「政府関係者」という言葉で隠した外務・防衛官僚の誰かから情報を提供され、その裏付けのために今井氏に取材を敢行し、「羽交い締め」の内容を聞き出したのであろう。
今井氏にしても、「切るつもりでいる」という高市氏の発言を記者から聞いたとすれば、心穏やかではなかったはず。安倍晋三元首相を秘書官として支え、一時は“影の総理”とまで言われた官邸官僚のプロである。自分のキャリアを守るためにも「総理の暴走を止めた」という事実を強調したかったに違いない。
こうした一連の「リーク」は官僚たちによるある種の「反乱」といえる。人心掌握術に長けているとはいえない高市首相は財務省や経産省出身の秘書官たちとも溝が深まっていると聞く。つまり、官邸がチームとしてまとまっていない疑いがあるのだ。
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