AIが減少させる「最後のボタン」を押す人間の罪悪感
ただ、核兵器以外の選択肢の積極的な使用には、すでにクラスター爆弾の使用や対人地雷の敷設などにみられるように、一切躊躇わないことが、対ウクライナ戦争で鮮明になっていることと、米中同様、AIの軍事利用の規制と制限には否定的な姿勢を貫いていることから、今後、LAWSが実戦投入されるような事態になれば、すでに対ウクライナ戦線でドローン兵器を投入していることからも分かるように、ロシアも配備・使用することが十分に考えられますし、LAWSの提供国となることも大いに考えられます(ちなみに、現時点でAI兵器およびLAWSのトップ3は米中トルコの参加国で、ロシアはそれに次ぐ位置づけにあるとされています)。
米中ロ仏英の核保有国(N5)とインド・パキスタンを含む核兵器国については、核は相互抑止的な役割を持つに止まっていると考えられ、核兵器の制御と管理は厳格なためさほど心配はいらないと考えていますが、今後、懸念すべきは隠れた核兵器国であるイスラエルと、核保有国であることを公言している北朝鮮による“暴発的使用”であり、核不拡散と共に、国際的に両国が核兵器を“使うことができない”ように制御を強める必要があります。
特にNPT体制に左右されないと言い切る北朝鮮については、監視と圧力の強化が必須です。
ただ、北朝鮮が核兵器を用いる可能性があるのは、北朝鮮が崩壊する際だと考えられることから、今後、進められるべきは金体制の存続と核兵器のコントロールをdecouplingすること、つまり切り離してしまうことです。具体的にどうdecouplingを進めればいいかは、大きな問いですが。
個人的な見解にはなりますが、核兵器は実質的に“使うことができない兵器”になったと考えているため、使われれば破滅的な結末を人類と地球にもたらす究極の自殺兵器であり続けるものの、深刻に恐れるべきものではないと見ています。
ただ、北朝鮮の暴発に加え、懸念すべきは何らかのアクシデントで、核兵器がテロリスト集団の手に渡り、管理の箍が外れる事態が起きることで、国際協調体制が実質的には崩壊したと言われている現在の国際社会においても、核兵器の管理については、決して“現在の幅からは漏らさない”ことが必要です。
それが徹底できる限りは、核兵器は使えない兵器としてのステータスを保つものと考えます。
今後、最も憂慮すべきは、もうすでに使われ始めていますがAIの軍事利用、特にAIが人の手を介さずに自律的に攻撃まで至るLAWSの投入がもたらす危険性の拡大です。
心理学の実験で必ず出てくる“トロッコ問題”で試されるように、人の生死を決定するシーンにおいて、ジレンマに苛まれる現場から離れるほど、最後のボタンを押す人の罪悪感は減少することが分かっていますが、同じ状況がAIの軍事への導入によって人間が殺害の決定を回避するような事態が進むと、私たち人間の中にある感情と理性に基づく抑止の箍が外れてしまうのではないかと懸念しています。
ガザの空にはイスラエルのAI制御の攻撃ドローンが飛行して、ハマスの構成員の殺害のために数十倍の一般市民を巻き添えにしていますし、イスラエルとイランの戦争も、ロシアとウクライナの戦争も、弾道ミサイルが飛び交う一世代前の戦い方に加え、ドローン兵器によるピンポイント攻撃の応酬が主になっています。
戦争が長期化し、当事国間における人的被害が顕著になるにつれ、イスラエル・イラン戦線にも、ロシア・ウクライナ戦争にも、LAWSが導入される度合いが高まると予想できます(すでにトルコ製のLAWSがロシア・ウクライナ戦争に投入されたという情報もありますし、イランがトルコから入手していつでも利用できる状態にあるという情報もあります)。
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