来年の総裁選に向け羅針盤なき航海が続く「高市丸」
総選挙の後、麻生派は新人11人を含む18人の新入会員を迎え、所属議員が計60人に急増した。他派閥が政治資金問題で解散し、党内勢力図が混とんとするなか、唯一存続する派閥として存在感を増している。さらに勢力を拡大し、ポスト高市をにらみながら、政権を実質支配していくのが麻生氏のハラだ。その意味でも、この議員グループには利用価値がある。
なにしろ、茂木、小泉、小林といった面々を束ねて動けるのである。彼らは高市首相を支えるという大義名分、そして麻生氏が中心になっているという重い事実には逆らえない。なにより、麻生氏の呼びかけを断れば「反高市」の旗を鮮明にすることになり、政権内での立場を失う恐れがある。仕方なく、「高市支持」という檻の中に閉じ込められる道を選んでしまったといえるだろう。
だが、高市首相にとっても、有利な展開と言えるのかどうか。麻生氏の意向に背いたら、何が起こるかわからなくなってしまったのだ。
麻生氏は、この議連を単なる「応援団」ではなく、総裁レースをキングメーカーとして取り仕切っていく「装置」として捉えているように思える。総裁候補の一人である林芳正総務相を外しているのが何よりの証拠だ。
昨年の総裁選では、麻生氏が投票前夜、麻生派所属の議員に出した“指令”が決め手となって高市氏が選出された。麻生氏が高市氏を選んだ背景には、総裁選終盤、急速に支持を伸ばしてきた林氏の当選を阻止する狙いもあった。
林氏には、かつて「宏池会」のドンといわれた古賀誠氏がついている。福岡政界における麻生氏の政敵だ。その人が「林政権」を実現させるため水面下で動いていた。
麻生氏は今回も、同じ構図で林氏を排除した。その一方、議連の発起人という形で、お気に入りの3人の総裁候補を掌中におさめた。つまり、麻生氏にとってこの議員グループは、どちらに転んでも自らの権勢を維持できる魔法の迷宮になっていく可能性を持っているのだ。
では、高市首相自身はこの議連をどう思っているのだろうか。自らを支えてくれる党内組織が誕生するのは歓迎すべきことであるに違いない。いぜんとして少数与党の参院で、思い通りに動いてくれない石井準一参院幹事長らをけん制するためにも、麻生氏のバックアップが必要だ。
しかし、それは結局のところ、麻生支配の自民党に戻るということにほかならず、衆院選後に高市首相が描いた「一強」体制とは逆行してしまうことになる。喜んでばかりはいられないはずだ。
高市首相の強みは、ネット上の熱狂的な支持層にある。しかし、麻生氏が用意したこの「国力研究会」という装置は、そうした制御不能なエネルギーを、伝統的な数と序列の「論理」で上書きしようとするものに違いない。
「高市支援」と銘打った大芝居。その幕が上がった今、高市首相は自分自身の言葉である「国力」という名の下で、皮肉にも自らの政治的生命線を麻生氏に委ねることになった。来年の総裁選に向け、高市丸の羅針盤なき航海は続く。
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