トランプの「米中は偉大なG2」という二重三重の大間違い。“劇場型軍国主義”を演じるしかないアメリカという迷惑国家

 

「アメリカの臨終」とともに消滅する覇権システム

こういう体系的な戦略思考(つまりインテリジェンス)が不得意なトランプが、中国側の提言に対して丁々発止の議論を挑んだとは考えられず、細かいことはよく分からないけれども「まあ、協力をベースとして積極的に対話をしていくというのはいいんじゃないか」くらいのことでこの提案を受け入れたのだろう。

これを彼の理解の範囲で翻訳すると「米中は2つの偉大な国であり、それを私は『G2』と呼んでいる」(14日収録のFOXニュースのインタビュー)という表現になる。

「このG2という言葉は、米国と中国を同等の超大国と位置づける意味で使われる」のが普通で(16日付読売新聞の解説)、そうだとするとトランプは驚くべきことに、中国を〔これから挑戦してくるかもしれない新興国ではなしに〕すでに米国と「同等の超大国」になったものと認めていて、しかも〔だから蹴落としてやってG1の座を死守しようとするのではなしに〕トップの椅子を半分譲って中国と尻をくっつけ合ってそこに留まり続けようとしているかのようである。

しかしこの「G2」論は二重三重に間違っている。

第1に、G1にせよG2にせよ覇権システムそのものがすでに冷戦の終わりと共に歴史的役割を終えていて、冷戦時代の2つの覇権国のうち旧ソ連はゴルバチョフ大統領の正しい決断によって自ら解体の苦悩の道を選び取ったのに対して、米国はブッシュ父大統領の「これで旧ソ連がいなくなって米国が唯一超大国になった」というお馬鹿な時代認識によって暴走し、イラクやアフガニスタンで、今またベネズエラやイランで、そしてもしかしたらキューバでも、やらなくてもいい戦争をやって自滅の道を突き進んでいる。

米国が覇権国であることを止めることに失敗し続けて全世界が大迷惑を被っているのが今の時代である。

第2に、従って米国の覇権に中国が取って代わるかもしれない〔G1交代論〕とか、中国と覇権を分け合うことで米国が生き延びられるかもしれない〔G2論〕とか思うこと自体が間違いで、なぜなら米国は最後の覇権国であって、その臨終とともに覇権システムそのものが消滅するからである。

覇権システムは、資本主義の勃興と共に世界史の一時期に現れた期間限定の概念であり、その下では海軍力はじめ軍事力に優れた者が未開のフロンティアを強奪してより多くの富を手にすることが出来た。が、この地上にもはや奪うべき物理的なフロンティアは存在しなくなり、従って資本主義が緩やかながらも終焉に向かい始めた中では、覇権そのものが死語と化すのである。

第3に、覇権システムがなくなると世界が大混乱に陥るのではと心配する人がいるが、そんなことはない。第2次世界大戦は、ヒロシマ・ナガサキを含めて国家同士が覇権を求めて軍事力の限りを尽くして争うことの凶悪性、悲劇性、空虚性を誰の目にも明らかなように示し、その血と涙の教訓から国連が生まれ、一国一票の完全フラットな多国間主義の対話システムとその下での侵略戦争の禁止、紛争の平和的解決を旨とする国連憲章を掲げた。

それを裏切って覇権戦争の泥沼に世界を再び引き込んだのは米国とソ連であり、上述のようにソ連が自己破壊を断行してそこから離脱した後も今なおその道を突き進んでいるのは米国である。そういう意味で、戦後の国際秩序の本道は「多国間主義」であり、それを撹乱した邪道が「覇権主義」であった訳で、だから中国も、今やプーチンのロシアも、例えばマハティール=マレーシア元首相も、誰もが「多国間主義に戻れ」と言うのである。

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