トランプの「米中は偉大なG2」という二重三重の大間違い。“劇場型軍国主義”を演じるしかないアメリカという迷惑国家

 

トランプの「しおらしさ」に見る米国の落ちぶれた姿

「トランプ氏は北京滞在中、珍しく『沈黙』を続けた。一部米メディア〔FOXニュースのこと〕のインタビューに答えたものの、普段と異なり記者団の質問に答える場面はほとんどなかった」(16日付日経)。

前号で述べたような、歴史的な物差しの「数千年か数百年か」という長さ・重みの違いということがベースにあったことは間違いないが、さらには落ちぶれた元超大国が生きのいい新超大国に「すがりついては突き放される」という新しい現実に気が付いて、それに打ちのめされたのではないか。

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そのことを4分の1世紀前に正しく抉り出していたのは、フランスの皮肉っぽい文明評論家=エマニュエル・トッドの『帝国以後』である。本誌は2003年のその和訳(藤原書店)の出版直後から何度もそれを引用しているが(例えば高野著『滅びゆくアメリカ帝国』、にんげん出版、2006年刊のP.212)、しつこくもう一度。

▼アフガニスタンとイラクに対する派手な戦争は、米国の強さよりも弱さの表れである。

▼弱さとは、経済的に見て米国はモノもカネも全世界に依存して生きるほかなくなっていることであり、外交的・軍事的には、それを維持できなくなる不安からことさらに好戦的姿勢を保って、自国が世界にとって必要不可欠な存在であることを証明しようとするのだが、欧州、ロシア、日本、中国など本当のライバルを組み敷くことが出来ないので、イラク、イラン、北朝鮮、キューバなど二流の軍事国家を相手に「劇場型軍国主義」を演じるしかないのである。

▼こうした米国の酔っ払いのような情緒不安定は、要するに、冷戦の終わりに際して「冷戦という第3次世界大戦に勝ったのは米国で、今や敵なしの“唯一超大国”になった」という誇大妄想に陥ったことによる。

米国がモノもカネも全世界に依存して生きるほかなくなっているというのに、米国は世界中の国々から貪られている被害者だという錯覚から、大々的な関税戦争を発動して自ら混乱に陥り、自国の最高裁からそれを違法だと指摘されてすでに徴収した関税の返金を迫られるという不様な事態に追い込まれたのは、つまりは自国が世界の中でどういう地位にあるかの認識がまるで狂っているからにほかならない。

ベネズエラの大統領夫妻を米国に拉致して牢屋にブチ込んだり、イランの最高指導者とその家族を爆殺したのは、ベネズエラやイランが二流三流の軍事国家で、それを相手にテレビ映りのいい「劇場型軍国主義」を演じても自国に対する報復がなされないからであり、もしそれが米国の外交・軍事原則であるのなら、中国に対しても同じ原則を適用すればいいではないか。

それが出来ないとなると、一転、卑屈になって歯の浮くようなお世辞を言ってすがりつくようなしおらしい態度を示すというのは、中国が今や一流の軍事国家になって無闇に圧力をかけたり軍事的に恫喝したりしたら大変なことになると知ったからである。恥ずかしい米国の落ちぶれた姿である。

こういうことの結果、台湾問題はこれからどういう展開になるのかは、次号以降で考察しよう。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年5月25日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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