“マスゴミ”と呼ばれて当然。大手日本メディアの「シャングリラ会議」めぐる報道への“大きな疑問符”

 

中国が「ただ乗りした」ように誤読できるフジテレビの報道

次にフジテレビの記事だが、この見出しではまるで中国が「ただ乗りした」ように誤読できるが、結局、伝えているのは、アメリカが「中国をけん制」したということだ。つまりこれも『読売新聞』と同じく、まだ米中対立は続いていて、中国も嫌われていると言いたいようだ。

そう信じて安心したいのは分かる。しかし、国防総省が発表したヘグセス国防長官の発言を全部読んでも、そこから中国に対する厳しい姿勢は伝わってこない。

もちろん、確かに、「中国を含むいかなる国家も、自らの覇権を押し付け、アメリカや同盟国の安全と繁栄を脅かすことはできない」と発言している。しかしこれは「中国も含む」とわざわざ書いているように一般論だ。しかも目新しさはない。

むしろ注目しなければならないのは、米中首脳会談の流れをはっきり示した以下の発言ではないだろうか。

「トランプ大統領のリーダーシップの下、米国と中国の関係は長い年月の中で最も良好だ。トランプ大統領とこの政権は、中国との安定した平和、公正な貿易、そして尊敬に基づいた関係を求めている。これが実現したことは偶然ではない」

もっとも日本の新聞の中にも正確なものもある。例えば同じ『読売新聞』の別の記事(「ヘグセス米国防長官「ただ乗りは終わりだ」と宣言…全同盟国に国防費「GDP比3.5%」引き上げ要求」)だ。同じ媒体でも記者の力量で差が出るのだろう。

そして最後にフジテレビの記事が伝えた「小泉防衛大臣が異例の直接質問」についても触れておこう。勇気のある質問で率直に驚かされたからだ。

何といってもヘグセス国防長官は対GDPの国防費の増額を各国に求めた張本人だ。その意図は「自分で守れ」だ。つまりアメリカに頼るな、と突き放したのであって、関与の縮小を宣言したに等しい。

そのヘグセス氏に向かって「米国の関与が過小評価されていると感じますが、地域を安心させる言葉を頂けますか」(フジテレビ)と小泉大臣は求めたというのだ。

発言の意図が「揺るぎないアメリカへの忠誠心」だというのは分かる。しかしピントがズレ過ぎていないだろうか。こんなことをするのはいまや日本とフィリピン、そして台湾しか見当たらない。

繰り返しになるが、その構図に最も大胆にメスを入れているのが、いまのトランプ政権自身なのだ。

日本とフィリピンは、意図的にそのことに気が付かないふりをしているのだろうか。

6月3日、国連の新たな非常任理事国を選ぶ選挙で、フィリピンはライバルと目されたキルギスタンに敗れた。その敗因の一つは、内政の不安定さなのだという。よく指摘されることだが、フィリピンの「反中」は、内政の不安定さを外の「敵」に向けてごまかす典型ともされる。

ここ数年中国は、困窮したフィリピンのために化学肥料やジェット燃料を支援してきた。一方で対立を抱えながらも援助の手を差し伸べてきたのだが、今回のシャングリラ・ダイアログの件で、いよいよ堪忍袋の緒が切れたのか、「中国の援助はいつまでも続かない」(外交部報道官)と宣言した。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年6月7日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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