「今までで一番成功したG7」は本当か?エビアン・サミットが露呈させた、もう隠せないトランプと欧州の決定的な亀裂

 

「不安定性管理の時代」への移行

私は今週の国際情勢を見ながら、ある一つの結論にたどり着きました。

世界は「戦争の時代」から【不安定性管理の時代】へ移行しつつあります。

ロシアも勝てない。ウクライナも勝てない。イスラエルも勝てない。イランも勝てない。 中国も容易には台湾を統一できない。アメリカも世界を単独で支え続けられない。

つまり、誰も決定的な勝利を得られない世界です。 だから各国は、“勝利”ではなく、【管理可能な不安定性】を追求し始めています。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

管理された不安定性は、安定とは同義語ではありません。 管理された不安定性は【いつ崩れるかわからない均衡】です。 均衡が保たれている間は平和に見えますが、 小さな誤算や事故といった偶発的な出来事が一気に危機へ発展する可能性を常にはらんでいます。

歴史を振り返れば、大きな戦争の多くは『本当は誰もそこまでのつもりはなかった』という状況の中で起きています。

1914年のサラエヴォがそうでした。オーストリア皇太子の暗殺という“局所的な事件”が、同盟の連鎖を引き起こし、 ヨーロッパ全土を巻き込む第1次世界大戦へと発展しましたが、当事者の誰も最初からそれを意図していたわけではありません。

そして今の世界は、そうした【誤算が最も起こりやすい環境】になりつつあります。

米・イランの合意に解釈の齟齬がある。 中国の「行政行為」と台湾・日本の「主権侵害」という認識が衝突する。 ロシア・ウクライナの停戦交渉が続きながら前線では戦闘が続く。 G7の中でアメリカと欧州の世界観がずれ続ける。

こうした【管理されているようで管理されていない緊張】が、世界のあちこちで同時進行し、 厄介なことに、それぞれが独立した問題ではなく、互いに連動しています。

ホルムズ海峡の危機が原油価格を押し上げ、欧州のエネルギー政策に影響し、ウクライナへの支援継続に影響を与えています。 中国の台湾周辺での動きが日本の安全保障政策を変え、日米同盟の在り方を問い直すきっかけになっています。

【不安定性の連鎖】という構造が、世界全体を覆いつくし、世界を非常に不安定な場所に変えています。

誰も勝てない時代に必要な力とは

そのような世界の中で、私が最近強く感じるのは、世界に必要なのは新しい兵器でも新しい同盟でもないということです。

必要なのは、【対立を管理する仕組み】です。 勝者を決める仕組みではなく、共倒れを防ぐ仕組みです。

外交、調停、危機管理、信頼醸成措置… これらは地味で時間もかかります。 そしてニュースにもなりにくい。

しかし誰も勝てない時代だからこそ、それらの価値はかつてなく高まっています。

翻って、日本はどうでしょうか。 エビアン・サミットで高市首相が問われたのは『ホルムズ海峡問題を前に、日本として具体的に何ができるか』でした。 エネルギー安全保障の観点からの関与、そして調停機能の発揮などが挙げられますが、 こうした核心をつく重要な問いは今後も繰り返し突き付けられることになるでしょう。

ここであえて日本が持つ強みを改めて考えてみたいと思います。 日本は軍事大国ではないので、対立する各国の『調停者』として信頼を得やすい立場にあると言えます。 戦後80年以上にわたって積み上げてきた平和外交の実績は、今の世界においてむしろ希少な価値を持ちつつあります。

一方で、日本がこの役割を担えるかどうかは自明ではありません。 防衛費の大幅増額、安全保障政策の転換という変化の中で、 日本がどこまで『調停者としての信頼』を保てるかは未知数と言わざるを得ません。 特に中国・台湾問題や朝鮮半島問題において、日本は当事者に近い利害関係を持っています。 利害を持つ国が調停者になれるかどうかは、問われるべき難しい問いです。

それでも私は、こう思います。

2026年後半の世界を左右するのは、『誰が勝つか』ではありません。 【誰が不安定性を管理できるか】です。

軍事力は“勝利のための道具”として生まれました。 しかし、現在のような【不安定性管理】の時代においては、軍事力だけでは問題を解決できないのは明白です。

外交的な信頼、調停の能力、危機を対話に転換するチャンネルの存在といったソフトな力こそが、 これからの国際社会における最も重要な戦略資産になるでしょう。

【誰も勝てない時代だからこそ、「共倒れを防ぐ力」を持つ国が、真の意味で強い国になる。】

そのことを、今週の国際情勢を眺めながら、改めて強く感じています。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年6月19日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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