中国のAIブームは成長どころか失業を生む事態に。米国と真逆の「逆噴射」に追い込まれた習近平の大誤算

 

補助金が国運衰退の原因

中国が、国家としての信頼性を喪失している背景には、過剰な補助金政策がある。補助金は温床である。芽を出すまで温床は必要であるが、成木に達しても政府によって保護し続けることで、企業の自律性を奪っている。これが、偽らざる中国産業の実態である。企業の成長が、地に足が着いていないのだ。具体的には、基礎研究力不足によって「金太郎飴」のような同一種類の製品を大量生産している。

諸悪の根源は、過度の補助金による政府への「甘え」にある。それが、企業の自律性を奪い、過剰生産という矛盾を生んでいる。これは、EV・半導体・AI・機械産業すべてに共通する「構造的欠陥」を浮き彫りにしている。

IMFは、中国の補助金が対GDP比4%と高いので2%へ引き下げるように提言している。一般的に補助金の対GDP比は、多くの国が0.5~2%程度である。その内訳は次の通りだ。

先進国は、0.3~1.0% 新興国は、1~2% 産油国は、2~3%(燃料補助金が大きい)

中国の4%は、通常の2~4倍の規模であり、IMFが強く問題視する理由である。

IMFは、補助金を「市場歪曲の源泉」として扱い、特に以下を問題視している。国有企業への過剰支援。過剰生産能力(鉄鋼・EV・太陽光パネルなど)を世界市場に輸出して、国際価格を押し下げ、他国産業を圧迫している。これが、中国の財政負担を大きくする。つまり、中国の補助金は「国内産業保護」ではなく、「世界市場の構造を変える規模」というのがIMFの評価である。

OECDも、中国企業が受け取る補助金の規模が、OECD加盟国企業の3~8倍に達すると報告している。これは、国有企業(SOE)や特定産業への集中支援が背景にある。OECDは「市場の歪み」を強く問題視している。補助金の透明性が低いこと。WTO(世界貿易機関)ルールでは補助金の詳細開示義務が弱いこと、国際競争条件が不公平になることを指摘している。WTOは、中国加盟(2001年)以前に設立されており、中国のような「異質国」の加盟を想定していなかった盲点を突かれた形だ。

補助金は、最終的に企業の自律性を蝕むという極めて厄介な存在である。補助金は、短期的には産業を急成長させる。生産量は増える、価格が下がる、市場も拡大するなどの効果がある。だが同時に、「自律性の喪失」を生む。企業が研究開発を怠る、価格競争に走る、補助金がないと生きられない体質になるのだ。一方、補助金の対象にならない外資は、不平等な競争条件に耐えられず撤退する。これによって、海外からの技術更新が止まる。つまり、補助金は「成功のように見える失敗」である。

EV産業を例にして説明すると、次のようになる。補助金で、BYDなどは急成長したが、技術研究投資が弱いという欠陥を抱えている。具体的には、次世代電池の本命とされる「全固体電池」では、日本よりも大きく出遅れている。また、価格破壊で利益が出ないという悩みだ。補助金が切れたら倒産という矛盾が生まれる。EVでの補助金が、対象外である外資を撤退させている。

AIでは、補助金でスタートアップが増えた。しかし、先端半導体GPU(画像処理装置)が輸入できないことで、研究者は海外へ流出している。検閲で、自由研究ができない点も悩みである。モデルが、更新できないという矛盾も生まれている。このように、日進月歩が生命線であるにもかかわらず、米国から出遅れた立場を強いられている。中国は、このAIを使って一帯一路を引き留める策に出ているのだ。

企業は、一般に以下の循環を経て競争力を強化する。技術投資が品質向上を向上させる。これによって、市場競争力をつけて利益が再投資される。この結果、さらなる技術進化が進むのである。しかし、中国のように潤沢な補助金によって、以上のような好循環が壊されるのだ。

中国の場合は、次のようなケースになる。

技術投資=補助金頼み 品質向上=価格競争で軽視 市場競争=補助金で歪む 利益再投資=利益が出ない 技術の進化=外資撤退(外資は不平等競争で撤退)で止まる

こうして、補助金は最終的に中国産業の「筋力」を奪う事態となる。「良かれ」と始めた補助金が、最終的に中国産業を「衰えさせる」厄介な存在に変る。今まさに、それが始まっている。中国は、もはや引き返せる段階をとうの昔に通り過ぎた。これからは、「負の効果」に苛まされる段階だ。その準備が、中国にあるとは思えない。「毒を食らわば皿まで」という状況に追い込まれている。

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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