生成AIは、反省的思考を身に付けている人にとっては、真に便利な道具であるが、AIの答えを鵜呑みにする人にとっては、能力を減衰させる道具である。例えば将棋のプロはほとんどの人がAIを使って研究しているが、それはAIの出す答えを吟味して、自分なりに納得して自家薬籠中のものにしているからであって、毎日AI相手に将棋を指したからと言って強くなるとは限らない。
将棋の最強AIを隣に置いて、次の一手をAIに聞いてその通りに指せば、たとえプロが相手でも勝つだろう。でもそれは私が考えた手ではないので、そんなことをしても、将棋は強くなれない。児童生徒にAIを与えても、AIの答えを鵜呑みにしている限りは、学力は向上しない。AIを使いこなす将棋のプロと違って、AIの答えを吟味する習慣がない人がAIを使うと、却って思考力は落ちる。小学生に、AIの答えを吟味する反省的思考を期待するのは無理だから、生成AIを使わせれば使わせるほど、思考力や判断力は衰退する。
デジタル教育先進国のノルウェーの首相が、自分たちの失敗を認めて、デジタル教育を推進しようとしている日本に対して、デジタル教育は考え直した方がいいと忠告しているのに、日本側は聞く耳を持たないようである。日本政府は日本の児童生徒を思考力がない大人に育てて、政府に楯突かないように教育したいと考えているに違いない。しかし、イエスマンばかりの組織は企業であれ国家であれ、いずれ衰退することは歴史が証明している。国は滅びに向かって転げ落ちて行っても、権力だけは手放したくないという権力病は死に至る病なのだろうね。
先に将棋の話が出たので、少し寄り道してAI将棋の話をしたい。ゲーム理論にツェルメロの定理というものがあり、有限回の交互手順で進み、過去の手順や現在の局面が開示されている、運の余地が入らないゲーム(完全情報ゲーム)では、先手必勝か後手必勝か引き分けかが、最初から決まっているという。将棋は完全情報ゲームなので、先手必勝かもしくは千日手(同じ手順が無限に繰り返される)か引き分け(持将棋)だろう。AI同士の対局では、先手の勝率が8割を超えているので、恐らく先手が必勝だと思う。しばらく経てば、必勝手順が明らかになるかもしれない。尤も明らかになったところで、プロがおまんまの食い上げになることはない。なぜならば、たとえ必勝手順がAIによって解明されたとしても、その手順は天文学的な数値で、人間が覚えることは不可能だからだ。
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