「大阪都構想を後押し」という目的が生んだ異形の法律
それにしてもこの法案、9,000字にも及ぶわりには、同じことばかり書き連ねていて、おそろしく中身が空疎だ。
大規模災害に備えて首都機能を補完する「副首都」を指定し、過度な一極集中を是正して多極分散型の経済成長をめざす。
目的はよくわかる。その達成のために「政府は首都機能の分散や災害時の事業継続、交通・通信網の多重化などを盛り込んだ基本方針を定める」とある。まだ、基本方針も決まっていないのだ。
その一方で、「副首都」が、政府から手厚い支援が受けられることだけは決定している。たとえば、国の機関の拠点整備や交通網の整備、規制緩和などだ。民間企業の移転を促進するために必要な税制上の措置も講じてくれる。
では、「副首都」になるには、どのような要件が求められるのか。条文上では「政令で定める」とされ、具体的な数値や詳細な基準の大部分は今後の政令委任事項となっているが、実のところ、その答えはこうだ。
「行政の代替機能、人口・経済の集積、適切な地方行政体制を備えていること」。つまり、大阪のような「大都市圏」であるということが前提条件だ。
しかし、副首都が大都市である必要があるのだろうか。AI、クラウド、高速通信、リモートワーク、さらには政府のデジタル化がこれだけ進展している現代。東京にある中央省庁や巨大オフィスを、そのままそっくり別の大都市へコピーするという昭和的な発想が通用するとは思えない。
重要データはクラウドに分散させ、各省庁の職員は自宅や全国の地方都市からリモートで意思決定や政策遂行できる仕組みを整えるほうが、災害時のリスク分散上、はるかに合理的なはずだ。
災害対策を謳う一方で、人口と経済が過度に集中した大都市をあえて副首都に指定しようとすること自体、リスク管理として自己矛盾を抱えているのではないか。「大阪都構想を後押しする」という目的が最初にあるから、そんな異形の法律ができてしまうのだ。
そのことを誰よりも理解しているはずの「チームみらい」が法案に賛成したことは、この政党の限界を感じさせた。与党との修正協議のなかで、副首都を「デジタル行政の先進地域」と位置づけさせたというのが賛成の主な理由だが、政権側にうまく利用されるだけの存在と国民の目には映るだろう。
危機感の共有を欠いたまま、数の論理と政局の損得だけで強行された今回の法案成立は、高市政権の足元がいかに脆いかを証明している。中身の空疎な「副首都」の看板の裏で進むのは、国家の危機管理ではなく、特定の政治的野望を叶えるための足固めにほかならない。
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