「トランプと習近平の握手」と「一度も“台湾”の文字が出なかった」の裏側。米中首脳会談で先送りされた争点が迎える“次の期限”

 

【2-2.順番の壁】

ロイター通信は協議に詳しい関係者の話として、双方の対立点は計画の中身そのものではなく、措置をどの順番で実施するかにあると伝えています。

イランの提案は、海峡の再開を先にし、核の問題は後回しにするものです。米国の具体的な対案は公表されていませんが、トランプ大統領はイランの提案を拒否し、封鎖を緩める姿勢は見せていません。

公開情報から見る限り、双方は何を先に実施するかで折り合えていないように見えます。先に動いた側は、相手が約束を守らなければ丸損になるからです。

私が調停の現場で何度も向き合ってきたのは、まさにこの順番の壁でした。

コソボやイラクの戦後復興、ナゴルノカラバフ紛争の調停、そして現在、各地で行っている調停・仲介でも、捕虜の交換や地雷原の地図の引き渡し、絶対に獲得しなくてはならない要素の提示といった小さな措置でさえ、どちらが(誰が)先に差し出すかで何日も止まることがありました。

こうした局面で調停者がすべきことは、どちらが正しいかを裁くことではありません。双方の措置を同時に動かすための「器」「仕組み」をつくることです。

捕虜の交換であれば、双方の名簿を第三者が先に預かり、同じ時刻に同じ場所で引き渡すように段取りを組むのが、現場でよく使われるやり方です。

前線からの部隊の撤退であれば、撤退をいくつの段階に分け、それぞれの段階を誰がどう確かめるのかを先に決めておき、一方が下がったことを相手方と第三者が確認してから、もう一方が下がるという手順を踏みます。

これをホルムズ海峡に当てはめるなら、私が提案したいのは、米国が封鎖の一部を緩めるのと同時に、イランが特定の航路の安全を保証し、その履行を中立の第三者が確かめるという形です。もちろん、これは現時点でどこにも合意されていない構想です。

ロイター通信が伝えたイランの計画には、4日から5日で最初の措置をとり、6日目に海峡を再開し、7日目に米国と直接協議するという段階的な工程が含まれていたとされます。これは未確認の情報ですが、もし事実であれば、イラン側にも同時履行の余地を探る意思があることになります。

米国の中間選挙までは、残り約1カ月です。大規模な軍事行動を選挙の前に避けたいという米国の事情は、交渉を続ける動機になる一方で、選挙の後には攻撃を再開するという観測も生んでいます。

つまり、イランの側から見れば、11月3日は「それまでに取れるものを取る」期限であり、同時に「それを過ぎれば何が起きるか分からない」期限でもあります。

交渉の外側でも、緊張は続いています。

9月27日には、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡で米軍の無人潜水機を拿捕したと主張し、米側は否定しました。SNS上では、イランがホルムズ海峡やハールグ島の周辺で「イスラエルのモサドや米CIAの工作員を捕らえた」とする動画が拡散していますが、裏付けは取れていません。イランのメディアが報じた「イスラエル協力者」の逮捕は、場所が動画の説明とは一致しておらず、私は慎重に扱うべきだと考えています。

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