どの国も歴史認識といえば、いろいろな思惑が絡まりつつ形成されていくもの。人気の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯氏は、かなり強引なロシアの歴史認識を例に挙げつつ、我が国・日本はどうあるべきかを論じています。
ロシアは、「スターリン・ファクター」をどう克服したのか?
第2次大戦のことを、ロシアでは、「大祖国戦争」と呼びます。
主な敵は、ナチス・ドイツ。
戦争時、ソ連の指導者はスターリンでした。
ロシア革命(1917年)を起こしたレーニンの後、実権を握ったスターリン。1922年から、亡くなった1953年まで、ソ連のトップにいました。
ところで、この人物、「非常に残酷な独裁者だった」ことで、知られている。「史上最悪の独裁者をあげよ」と聞かれたら、だいたいヒトラー、スターリン、毛沢東などを挙げる人が多いでしょう。
スターリンは、数え切れないほどの自国民を「人民の敵」と称して粛清した。30年代に粛清された人の数は、諸説あるものの最大700万人と言われています。
もちろん、現在のロシアでも、「スターリンは最悪の指導者だった」となっています。
ところが、問題もある。
スターリンは最悪の独裁者で、自国民を大虐殺した。一方でソ連は、スターリンの指揮によって「第2次大戦に勝利した」。
自国にとっての「悪」(虐殺)と「善」(戦勝)。今のロシアは、どうやってこの二つに折り合いをつけているのでしょうか?
スターリン「完無視」という解決策
ロシアはどういう解決策を見つけたのでしょうか?
「第2次大戦に勝った」ことは、超大々的に祝いますが、「スターリン」のことは、「完全に無視」することを決めた。
そんなことできるんですね~。
実際、ロシア国内で5月9日の「戦勝記念日」は、最も重要な祝日です。毎年1ヶ月ぐらい前から、国営テレビのニュースでは、当時の戦況がどう進展していったのか、毎日毎日放送される。
それで、子供も「戦争はどうはじまり、どう展開し、どう勝利したのか?」繰り返し繰り返し刷り込まれる。
しかし、そこに、「指導者スターリンはどう決断し、命令したのか?」という話はいっさい出てきません。
要するに、ロシアは、「独裁者スターリン」を無視しても、国を守るために戦った「普通の人たち」への感謝を忘れていないわけです。
(ここで、「シベリア抑留」「北方領土」など、いろいろ突っ込みが入りそうです。しかし、今回は別の話です。)