新国立競技場の建設現場では、とてもスムーズに工事がはかどっているそうです。建設を指揮している隈研吾さんは、どのように現場の雰囲気をつくっているのでしょう。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、建築家の隈研吾さんと日本ハムファイターズ監督の栗山英樹の対談を通して、人心を掌握する「伝え方」を紹介しています。
建築家・隈研吾流「人心掌握のテクニック」
来年のオリンピック・パラリンピックに向けて新国立競技場の建設が急ピッチで進められています。
隈研吾さんのお話によると、驚くくらいにスムーズに工事が進んでいるとか。どうやらそこには、隈研吾さんならではの、よい雰囲気をつくる試みがあるようです。
運と徳 隈 研吾(建築家)×栗山英樹(北海道日本ハムファイターズ゙監督)
栗山 「共通しているという点では、建築家が『このような建物にする』というイメージを描き、それを現場のスタッフと共有していくところも野球と似ていますね」
隈 「おっしゃる通りです。実はそのための僕なりのテクニックがありましてね。例えば、新国立競技場の屋根の部分は庇が重なったような形状になっていて、その先端はとても薄くしています。
しかし、僕は『図面通り、このディテールでつくってほしい』と現場のスタッフに一方的に押しつけるのではなく、『僕は法隆寺の庇が好きで、ああいう感じてやりたいんだけど、これで上手くいくかなぁ』と柔らかく投げ掛けるんです。
僕の背後にある気持ちを伝えながら理解を促していると、『隈がやろうとしていることに協力してやろう』という空気が自然と生まれます。
逆にその持っていき方を間違ってしまうと、どうしてもギクシャクしてしまいますね」
栗山 「なるほど」
隈 「競技場の材質を選択する場合も同じなんです。僕は住宅で使われている10.5センチ角くらいの繊細なサイズの木を競技場に配したい、と考えました。日本人が一番見慣れているのはこの寸法だし、これを多く用いることによって競技場全体が住宅のような温かい感じになるんじゃないか、と。
だけど、図面をただ渡して『これで施工してください』と言うだけでは駄目で、そこは僕の人間性をある程度晒し出しながら思いを伝えていったんです。
さらに言えば、用いる言葉も平易でなくてはいけない。難しい言葉ばかりを並べて、何が言いたいのかさっぱり分からない建築家も多いんですけど、僕はなるだけ易しい言葉を使うことを心掛けていて、またそのほうが相手にもよく理解してもらえます」







