楽天グループは2月14日に2022年12月期第4四半期決算を発表。モバイル事業の赤字が4593億円に拡大したことが主な要因となり、グループ全体で過去最大の3728億円の赤字となりました。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、楽天グループの今後を展望。モバイル事業での設備投資は今後も続き、赤字がすぐ減る環境にはないとしたうえで、想定より早く結果を出している、日本、米国、シンガポール、インド、欧州、中東・アフリカで通信事業者向けにソリューション事業を展開する事業組織「楽天シンフォニー」に期待。ただし、完全仮想化ネットワークサービスにも注意すべき点はあると伝えています。
楽天グループがモバイルの設備投資で4593億円の赤字の衝撃
楽天グループの赤字が話題だ。2月14日に発表した2022年12月期第4四半期決算では、3728億円という過去最大の赤字となった。ECや金融などは相変わらず順調に成長しているものの、楽天モバイルが4593億円の赤字ということで、グループ全体の足を引っ張っている。
新規ユーザーの獲得に苦戦する中、テレビCMからウェブ中心のリファラルマーケティングに切り替えるなど、コスト削減が重要となってくる。現在、KDDIへのローミングはデータ使用量の4%程度というが、基地局を増やさないことにはデータ使用量は減っていかない。99%以上の人口カバー率の達成、さらにはプラチナバンドを確保すれば、それなりに設備投資がかさんでくるだけに、コスト削減には時間がかかりそうだ。
そんななか、光明が見えつつあるのが、楽天シンフォニーだ。設立以来、6四半期で5億ドル以上の収益計上を達成したと明らかになった。楽天シンフォニーによれば、2027年に向けて、Open RANやクラウド、OSS/BSS市場は拡大すると見ており、楽天シンフォニーの需要が拡大するという。
成長目標としては2022年には4億9300ドルだった売上収益を2023年には前年比40%増を目指す。2月27日より開催されるMWCの出展案内などを見ても、昨年からOpen RANなどの展示が盛り上がっており、話題の中心になっている感がある。楽天シンフォニーやNEC、富士通にとっては間違いなく追い風である。
ただ、世界的な景気低迷で、各キャリアの設備投資が控えられているという話もある。また、完全仮想化でネットワークを動かそうとすれば、当然のことながら、消費する電力はバカにならない訳で、SDGsが叫ばれている中、逆行する動きともとられかねない。
ただ、三木谷浩史会長としてはアマゾンのように「ネット通販ではなくAWSで儲ける構図」を楽天モバイルと楽天シンフォニーにも重ね合わそうとしている。
楽天シンフォニーが世界で儲けることができれば、楽天モバイルの通信事業は赤字が出続けてもなんとかなるのかも知れない。「楽天モバイルの赤字が減るか、それとも楽天シンフォニーが大化けして大もうけするのが先か」いずれにしても、2027年ぐらいまでには、楽天モバイルと楽天シンフォニー、さらには楽天グループの命運がわかることになりそうだ。
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