トランプのイラン攻撃で台湾海峡が危機に?日本が直面する「中東と東アジア」の危険な連立方程式

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トランプ大統領の「軍事作戦はまもなく終わる」との発言に対して、「終わりを決めるのは我々」とするイラン。依然として先が見通せない中東情勢は、我が国の安全保障や外交判断にも影響を及ぼしかねない状況となっています。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では作家で米国在住の冷泉彰彦さんが、イラン戦争を巡る各国それぞれの国内事情が絡み合う「複雑な方程式」を分析。さらに中東情勢と台湾問題が連動する構造について解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:中東と東アジアをめぐる連立方程式

高市政権に解くことは可能か。中東と東アジアをめぐる連立方程式

アメリカとイスラエルによる対イラン戦争の勃発から10日が経過しましたが、事態は悪化の一途となっています。特に、ここ数日のアメリカの姿勢は、紛争の長期化を望むかのようであり、原油価格は高騰を始めました。開戦当初は冷静であった、アメリカ市場も不透明感から3月第1週は値を崩し、第2週に入っても下げが続いています。ダウ平均は、9日の午前中は、5万ドルの高値から6%下げた4万7,000ドル近辺となっていました。

とりあえず現状に関しては次の4つの「方程式」があると考えられます。

(1)イランは1979年の革命以来、強硬な保守派と穏健な現実派が競ってきた。その対立エネルギーを解消して団結するには「敵」が必要。そこでイラン・イラク戦争が戦われ、今はイスラエルを直接(核開発)で脅すか、間接(ヒズボラ、ハマスを使って)攻撃することで団結を模索。

(2)穏健派を勢いづかせて民主革命に誘導するには、今回の攻撃は逆効果であり、国内では徹底抗戦の勢いが出ていると見られる。

(3)イスラエルは本年10月の総選挙に対する危機感から、ネタニヤフ政権としては戦時を引っ張る必要があり、戦線拡大はむしろ願っているところ。

(4)アメリカでは湾岸などの同盟国への飛び火という予想外の展開から、世論との綱引きが始まっている。原油高はむしろ狙っていると考えられるものの、これも選挙対策としては行きすぎを是正する必要も出てきている。

ということで、3者ともに、当面この状況を停止する動機は薄いようです。アメリカの場合は、大統領が急速に翻意することで動きを止める可能性はありますが、イスラエルがその場合は暴走するかもしれず、その場合は問題が複雑化することもあり得ます。

という状況の中で、19日より訪米する高市総理には、自衛隊によるホルムズ海峡におけるタンカー護衛活動などが要請される可能性が否定できない状況です。

日本の場合ですが、とにかくバレル110ドルという水準にいきなり飛んでいるという状況は悪夢でしかありません。そんな中で、中東からのエネルギー輸送が難しくなった場合、高騰した原油価格を前提として日本はアメリカ産出のシェール・オイルなどの購入を申し出るとか、あるいはこれを契機として原発再稼働を進めるという代替案はあるにはあると思います。

それでもLNGの需給が逼迫する中では、仮にもLNG火力の稼働ができなかった場合に、重油の火力をフル稼働するとなると、排出ガスの問題は深刻になります。また、原発再稼働といっても、とにかく手続きには時間がかかります。そんな中では、海峡依存のゼロ化は非現実的、となれば自衛隊の派遣要請を断ることは難しいという判断に傾斜せざるを得ません。

この点に関しては、高市総理は「ホルムズ海峡の問題は存立事態にあらず」という見解を述べています。訪米前に、こちらから自衛隊派遣に「前のめり」になることは、得策でも何でもないので「フリーハンド」を確保したいのだと思います。一方で、小泉防衛相は「自衛隊の派遣を準備」するような言動をしており、これは恐らくアメリカにも伝わっている可能性があります。

こうした動きの全体は、近隣諸国、特に中国を刺激することになります。このことについては、日本の世論は理解しているのは間違いないと思います。例えば、アメリカの軍事プレゼンスが、今回のイランの問題により過度に中東に集中することになると、東アジアが手薄になり、台湾有事の危険が増す、そんな感覚はかなり幅広い世論に共有されていると思います。

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