国費を惜しみなく投じたはずのクールジャパン機構は、3〜400億円もの累積赤字を抱えて廃止まで検討される事態となりました。一方、韓国のKOCCAは支援するコンテンツ産業を約15兆円規模にまで育て上げています。この明暗はどこで分かれたのでしょうか。『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』では、著者で人気コンサルタントの永江一石さんが、役人が「投資ファンド」を作ってしまった日本と、民間企業の成功確率を上げることに一点集中した韓国との決定的な違いを解き明かします。
クールジャパン機構は失敗し、韓国KOCCAは成功した理由
Question

永江さん、こんにちは。クールジャパン機構が失敗した一方で、KOCCA(韓国コンテンツ振興院)が成功した理由を教えてください。
永江さんからの回答
クールジャパン機構とKOCCAの決定的な違いは、根本的な制度設計です。韓国が民間企業の成功確率を上げるための「徹底した産業支援」に特化したのに対し、日本は役人が利益を求める「投資ファンド」を作ってしまいました。ただ間違えてはいけないのは、失敗したのはあくまで役人が作ったシステムであって、日本のコンテンツ自体が世界に負けているわけではないんです。
●官民ファンドという制度の欠陥
そもそもクールジャパンとKOCCAを同じ土俵で比較すること自体が少し違います。というのも、クールジャパン機構というのは官民ファンドだから。国も出資して会社を作り、海外展開を支援しながら利益も出すという都合のいい仕組みでした。
しかし、政策目的の支援と投資の利益追求は必ず矛盾します。儲からなさそうなものには投資できなくなり、思い切ったリスクも取れない。産業の土壌を耕すような長期的な支援ができない時点で、最初の制度設計が破綻しているんです。
●韓国はコンテンツ産業に一点集中
一方で韓国はコンテンツ産業の成長を一気通貫で支える仕組みを作りました。目的は明確で、民間企業の成功確率を上げること。ここに特化してお金を突っ込んだんです。
例えば、かつてベトナムは戦争の歴史的背景もあって反韓感情が強かった。でも今はデパートに行けば韓国コスメや韓国料理のお店だらけで、街には韓国車が溢れています。わたし自身も現地で実感しましたが、日本の化粧品なんて全く見かけませんでした。これは韓国が国策として自国のドラマをアジア圏へ無償提供したからなんです。
そして、そのドラマの中には韓国製品を徹底的に登場させるんです。主人公は韓国車に乗り、サムスンのスマホを使い、韓国の化粧品でメイクをする。国が強力にバックアップして、K-POP、ドラマ、ゲームという特定の分野にターゲットを絞り、国を挙げてのマーケティングを行ったんです。事実、現在の韓国のコンテンツ産業の売り上げは約15兆円規模にまで成長しています。
●役人に経営はできなかった
翻って日本はどうだったか。何でもかんでも平等に支援しようとするから対象が広がりすぎ、結果的にただのバラマキになってしまいました。クールジャパン機構も政府が巨額の予算を注ぎ込みながら、3~400億円もの真っ赤な累積赤字を出して経営がパンクしている。
厳しい言い方をしますが、役人に経営なんてできるわけがなかったんです。自分のお金じゃないからダラダラと税金を使い、一部の企業にとっての「食い物」になってしまった側面は否めないでしょう。
●日本に必要なのは本当の積極財政
ただ、漫画、アニメ、ゲーム、食文化など、日本のコンテンツは今でも世界中で大成功しています。日本には世界と戦える素晴らしいコンテンツが既にある。だからこそ、国がやるべきだったのは中途半端な投資ファンドを作って利益を求めることではなく、民間企業が海外で勝負しやすい環境をサポートする、本当の意味での「積極財政」だったはずだと思います。
※追記 クールジャパン機構について、政府が廃止を検討中と報道がありました。役人がやるとやっぱりダメ、の一言に尽きます・・・
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