【なぜ今?】佐世保に飛来したオスプレイを間近で見てわかったこと

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緊急寄稿!大原さんちが住む長崎県佐世保市にオスプレイがやってきた!

メルマガ『大原さんちの九州ダイナミック』を漫画家の妻・大原由軌子と共同配信しているライターの大原広軌です。ニュース等でご存知の方も多いかと思いますが、長崎県佐世保市の米海軍赤崎貯油所に3月23日13時ごろ、オスプレイ2機が飛来しました。共同通信によると「給油目的ではないか」とのこと。諸事情あって着陸シーンは押さえられなかったのですが、2kmほど離れた対岸からその姿を確認、カメラに収めてみました。

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かなり拡大したため粗い写真になってしまいましたが、独特の形状の翼とプロペラは確認できます。全長17.5m、全幅25.5m(ともに回転翼含む)、時速446km/hで3500km以上もの航続距離を誇るオスプレイを初めて生で見たわけですが、特に感動したということもありませんでした。自分が米軍横田基地(東京都福生市)のすぐ傍で育ったため、幼いころから毎日嫌というほど航空機を見てきたからでしょうか。しかしヘリのように垂直離着陸を可能としたティルトローター方式には興味あり、です。何としてでもその模様、この目で確認してみたい。

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機体のまわりではたくさんの人が走り回り、写真のように燃料補給車による給油なども行われているようです。そして……、先ほどから気になっていたのですが、どこからか風に乗ってシュプレヒコールらしきものが聞こえてきます。すぐさま知り合い伝手に調べてみたところ、数十人の労働団体のメンバーの方々が反対集会を開いていたとのこと。あれだけ危険性が喧伝されたオスプレイ、自分が住む町への離着陸について反対意見が出るのは少しも不思議な話ではありません。実際のところ、本当に危なくてすぐに墜落するものなのでしょうか。これについては私が購読している軍事アナリストの小川和久さんのメルマガ『NEWSを疑え!』の第318号(2014年7月14日特別号)に、こんな記述があります。「オスプレイ報道に必要なこと」と題されたコラムから引用しましょう。

目に飛び込んできた新聞記事で典型的だったのは毎日新聞(7月11日)の用語解説です。

「垂直離着陸できるヘリコプターと水平高速飛行が可能な固定翼機の機能を併せ持つ輸送機。2007年に実戦配備された。普天間飛行場には老朽化したCH46輸送ヘリの後継として12年10月~13年9月の間に計24機が配備。CH46と比較し最高時速はほぼ2倍の約520キロ、航続距離は6倍近い約3900キロ。墜落などによる死亡事故が相次ぎ『未亡人製造機』の異名をつけられた」

どうして、「開発段階の事故で30人の死者を出したことから米国でも『未亡人製造機』と呼ばれたこともあった」くらいの書き方にできないのでしょうか。

客観的に書かなければならないオスプレイに関する用語解説でさえ、このようにバイアスがかかっているのです。

私は記者諸氏に必ず言います。

「開発段階で起きた4件の墜落事故は、航空機の開発の常識に照らせば件数としては多くない。死者が30人に上ったのは、脱出装置がない輸送機であり、1回の事故で19人が亡くなったこともあったからだ。脱出装置がある戦闘機なら、4回の墜落事故でも死者ゼロだったかも知れない。それに、危険な飛行機だったら、厳しい納税者のチェックがある米国で正式採用されるはずがない。実戦配備後の事故は、他の航空機と比べても多くはない。それをして危険だというのなら、旅客機は全て危険ということになってしまうではないか」

記者諸氏が決まって口にするのは、左右の配線が逆に取り付けられていたことで、低高度でもんどり打ってひっくり返った事故の映像です。

この事故は、初飛行(1989年3月19日)から2年3カ月しかたっていない試作機段階の91年6月11日に起きました。左右の配線を取り違えて結んだ結果、右旋回しようとしたところ左旋回してしまい、地上数メートルで左右にぐらぐら揺れながら落ちて、パイロット2人が負傷したというものです。単なる配線ミスであって、機体構造などオスプレイ固有の問題に起因したものではありません。ほかの飛行機でも起きる性格の事故ですが、テレビ、特にNHKは視聴者の目を引く映像というだけで同じ映像を繰り返し流しました。

実戦配備が始まったのは、この事故から16年後、2007年のことですから、そのレベルの「危険な飛行機」の状態にとどまっていると思う方がおかしいし、記者諸氏は何にも考えていないと言わざるを得ません。

それにしても、この映像を繰り返して流し、記者諸氏にも「危険な飛行機」のイメージをすり込んでしまったNHK『ニュースウォッチ9』の責任は小さくありません。

ここでマスコミがやるべき作業は、危険か危険でないかをいまだに論じたり、「危険な飛行機オスプレイ」が事故を起こす決定的瞬間を映し出そうと取材体制を組むことではありません。

いまマスコミに求められているのは、2012年6月の日本到着以来、なぜオスプレイが事故を起こしていないのか、その点の検証でしょう。米国での事故例も検証すべきです。

『NEWSを疑え!』の第318号(2014年7月14日特別号)

なるほど。以上の小川さんのコラムを読まれた皆さんご自身で、オスプレイが危険なのか安全なのかご判断くださればと思います。

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さて、時刻は14時30分、オスプレイに動きがありました。ヘリポートへと移動です。プロペラを回しながらゆっくりと前進していきます。そして海面に凄まじい水煙を立てつつ垂直離陸します。

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そのまま南の方角に向かい飛び去っていきました。

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騒音レベルですが、2kmほど離れた地点ではそれほど気になるものではなく、オスプレイ取材のためにホバリングしていたマスコミのヘリのローター音のほうがよほど耳障りに感じた、という佐世保市民も少なくないかもしれません。

 

『大原さんちの九州ダイナミック』

著者:大原広軌(おおはら こうき)
1969年、東京生まれ。フリーランスライター、構成作家。妻は漫画家の大原由軌子。2011年、家族とともに妻の実家がある長崎県佐世保市に移住。現在は夫婦でメルマガを配信しつつ、様々なメディアに寄稿する日々を送っている。
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