『ママチャリで日本一周中の悪魔』として、もうすっかりお馴染みの大魔王ポルポルさん。下関名物のアツアツ「瓦そば」をペロリ平らげた勢いで、意気揚々と九州上陸を果たしたものの、博多の地で待ち受けていたのは、思わず目を疑うほどの超デカ盛りな「トルコライス」。最近少食だという悪魔の命運やいかに……?
総重量3kg!とにかくカーニバルな「バカ盛トルコライス」
ついに、関門海峡より九州の地に足を踏み入れた大魔王ポルポル。福岡県・門司港では瓦で焼いた蕎麦の瓦そばを支配し、九州最大の繁華街である博多に向かっていた。
「ガッハッハッハ!! 博多にはもつ鍋や博多ラーメンなど、美味しいものがたくさんあるのだ。それら全てを魔族が支配しようではないか」と、「博多」を「墓多」へと変えようとしていた。
「博多までは結構山が続くのか……ガッハッハッハ!! そんなもの我輩にとって楽勝であるがな」と、北九州市から博多にかけて山道の連続であったが、スイスイと国道沿いにママチャリを漕ぎ続けた。
時々、車の運転手、我輩を見るためにスピードを緩め渋滞ができることもある。しかし! そんなことはお構いなしに我輩はママチャリを漕ぎ続けた。
気温も冬の風が吹き始め、少し寒くなってきた。しかし! 我輩は魔族だから風邪などひかない。
「九州の山は、なんと緩やかなのだ。我輩の越えてきた、これまでの山に比べると大したことがないのだ。ガッハッハッハ!!」
これまでにカツオのたたきを制した高知県のキツい山を登ったり、北海道では1週間ほど上り坂を登っていた記憶がある。半年間、数々の山越えをしたので、九州の山は緩く感じた。そんな思い出を走馬灯のように思い出す。そして、6時間ほどかけて、ようやく博多へと到着したのだ。
「ガッハッハッハ!! ココがあの有名な博多であるか。素晴らしく賑わっておるな。ガッハッハッハ!!」
そう言いながら街中をぐるりと見渡した。そして「ふん! 今から博多を「墓多」へと変えてやるのだ……」
しかし、よく見ると多くの人が我輩を避けるように見てくる。久々の都会で、少し恥ずかしくなったのか、我輩も思わず顔を隠す。
(今にも通報されてもおかしくない)
そう思った我輩は、恥ずかしいので、ひっそりと支配する店へと向かった。
博多の街中でも人通りの少ない裏道へと移動し、あまり賑やかではない所へとやってきた。広島では激辛汁なし担々麺。山口では梨ソフトや秋芳洞を支配したので、そろそろ味の濃いものが食べたい。
そんなことを考えていると、一軒の黄色い看板のお店を見つけた。看板にはローマ字で「HANAMARU」と書いてある。ここは博多でも有名な大盛のトルコライスのお店らしい。
「ガッハッハッハ!! 博多と言えばトルコライス。博多の支配は、ここにするか……」
と言って、ママチャリを邪魔にならない隅の方に止めた。
店内は薄暗く閉まっておるかのようだった。ドアの前で、「開いてる……?」と確認し、店の中に入った。
「ガッハッハッハ!!我輩が今からここを……」
「いらっしゃい! うわぁ。ピエロが来たでぇ」
と、話を遮るように歓待された。我輩も思わず油断してしまい、
「あ……すみません。ここってトルコライスの店ですよね」
と尋ねた。
話を聞くと、このお店は色々なメニューを扱っているが、特に人気なのが「トルコライス」と「トルコライス裏バージョン」である。普通盛り、大盛、特盛、バカ盛り、と、それぞれ量を調整できる。特盛で2kg。バカ盛りだと3kgになるそうだ。
また、大盛以上を完食しても残しても、店の扉前に掛けられているノートにコメントを残さなくてはいけない、という遊び心溢れた店になっている。
「まぁ。こんなもの魔族の我輩からすれば呼吸と同じだ。楽勝である。ガッハッハッハ!!」
と言って、内心ビクビクしていた。それもそのはず、旅をしていて胃袋が小さくなっていたのだ。
「だいまおうさま! ここは、ひとつバカ盛り行きましょうよ」
と、カウンターに座っていた男が言う。実は、この日たまたま、この店を取材していたニンゲンがいた(どの会社かはわからぬが……)。
その男が我輩に向かって
「だいまおうさま! バカ盛いっちゃいましょう! だいまおう様なら食べれますよ」
と言うものだから、
「こんなとこで、我輩の体力を消耗してはいけないのだ。ガッハッハッハ!!」
と、それを制止した。
我輩はバカ盛りは無理だ。旅で胃袋が小さくなってしまったのだ。仕方がないのでトルコライスの特盛を頼んだ。別の取材の男は、トルコライス裏バージョンの普通盛りを頼んだ。
店主は、厨房に入ると、大きな大きなお皿を用意した。我輩を除霊しようと思ったのか、はたまた「胃袋を満タンにして帰したい」というコックとしての使命を背負ったのか。この大きいお皿は一人用ではない。
その上に、ドンっとナポリタンを乗せ、ウンっとドライカレーも乗せ、ダダンっとトンカツまで乗せた。その上にはカレーをどっさりとかけて、我輩の前に差し出す。
「で……で……でかい……料理のカーニバルではないか」
我輩は思わず本音を漏らす。
店主も「大魔王様! これがトルコライス特盛です。約2kgあります」と言って厨房に戻っていった。山のように積まれたナポリタンとドライカレーは、まるで料理のカーニバルだ。
そして、次は裏バージョンを作り出した。インディアンスパ、チキンライス、トンカツをさっきと同じように乗せて、彩鮮やかなトルコライスの裏バージョンの普通盛りが我輩の前に置かれた。
「はい! これがトルコライスの裏バージョンです。作った2つの量を合わせると、約3kgのバカ盛の量になります」
と言って、先ほどよりは少なめのトルコライスが出来上がった。大食いチャンピオンの悪ふざけだ。
「な……なんだ! このカーニバルな量は!!」
机の上に、トルコライス特盛と裏バージョンの普通盛りが並んだ。しかし、ここでひるんではいけない。
足を一歩踏み出し、「ガッハッハッハ!! こんなもの我輩のブラックホールの胃袋に比べれば無に等しいな。」と、冷や汗が出た。見ているだけでお腹がいっぱいになり、帰りたくなった。しかし! 強気になってナポリタンから食べ始めることにした。
「ムム!! う……うまい!!」
まるで、おふくろの作るナポリタンのようで思わず吠えた。
「すばらしい。これは魔界にはない! 麺にコシがあり食べていて舌と同化するのだ。これならすべて食せるのだ」
と、次々に箸を進めた。このナポリタンは魔界という故郷の味を思い出しながら食べ進めたため、少しずつではあるが、次々ナポリタンが減っていく。ナポリタンだけの割合で10分の1ほど食べた。
しかし、お皿の上の料理は減らない。
続いてドライカレーにも手を伸ばした。そのドライカレーをお皿の上に乗っているカレーをつけて食べる。このカレーは普通、中辛、大辛、激辛、死に辛という5段階に調整できるのだ。
当然、我輩は辛いものが食べられないので普通だ。普通以下でもイイくらいなのだ。
「おお!! こ、これは……旨い!! インドの常識を超えておる」
と、よく分からない感想を漏らすほど満足の味だった。カレーにカレーをつけて食べる!! 旅をしていてこんなにも贅沢なことはない、そう思った。
それでも、料理は一向に減らない。
「ガッハッハッハ!! とても美味たる下僕たちだ。素晴らしいぞ」
と、ブラックホールの胃袋も10分食べ続けると満腹になってきた。当然、コッソリと箸を置いた。ボー然とお皿を見ている。「ガッハッハッハ!!」と言っても威厳がない。
「だ……だいまおうさま! 大丈夫ですか?」と取材中の男も言うが、お腹が苦しくてうまく話せない。皿の上の無残にも残された料理とにらみ合いが続く。
「味が濃い。甘いものが欲しい……」
そうぼやくと、「お持ち帰りするかい?」と店員が言ってきた。
この店は冬場のみお持ち帰りオッケーだ。夏場はできないぞ、と言い、お持ち帰りを行い、店内に掛けられているノートに「ごめんなさい」と記して、この店を支配した。
「ガッハッハッハ!! 博多の名物を全て支配するつもりだったが、この店で満足してしまったのだ。今日のところは、これで許してやろう」
と言って無事に博多を墓多に変えることができた。
大魔王ポルポルは、次の目的地を長崎県佐世保市にして、ママチャリを漕ぎ始めた。
DATA:
HANAMARU厨房
住所:福岡県福岡市中央区春吉2-2-5 エステートモア天神スタジオ 1F
営業時間:
[月~金]11:30~0:00ぐらい
[土・祝]12:00~0:00ぐらい
休憩(仕込み)15:00~17:00
定休日:日曜日
『大魔王ポルポルの日本征服の旅』
著者/大魔王ポルポル
日本一周の旅をしている大魔王ポルポルである。旅の裏側、隠れた小話など話したいことは盛り沢山!! だがしかし! タダで公開はできない。メールマガジンで日本のいろいろなことを掲載するのだ。メルマガに記載のアドレスに悩みや質問を送ってくれればメルマガで公開回答するぞ! ガッハッハッハ!!
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