安倍政権のイメージ操作か。北朝鮮が打ち上げたのは衛星ロケットだった

 

「休戦協定」を「和平協定」に置き換える4者協議を

そこでまず必要なのは、この北朝鮮の度を越した対米恐怖心の大元を取り除くことである。

周知のように、北朝鮮・中国と韓国・米国は1953年7月に北緯38度線を挟んで「休戦協定」を結んだ(韓国の李承晩政権は「北進統一」を主張して休戦に反対していたため不参加)。「最終的な平和解決が成立するまで戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」というこの協定は、言うまでもなく暫定的なもので、速やかに「和平協定」に置き換えられて、当事国間の国際法上の戦争状態を最終的に終結させることが予定されていたが、その後今日まで63年間、和平協定は結ばれないままで来た。

米朝間の不信が解消するどころかますます高まったためで、その一因は、1957年アイゼンハワー大統領時代の米国が、核を含む新たな武器の持ち込みを禁じた休戦協定第13節(d)を一方的に破棄することを宣言、58年以降に小型核弾頭付きの地対地ミサイル=オネスト・ジョン(射程25km)、マタドール(同1,000km)などの戦術核兵器を次々に在韓米軍に配備したことにあった。北朝鮮は大がかりな地下壕を建設して核攻撃に備えると共に、ソ連と中国に核開発を支援するよう頼んだが、63年に最終的に拒否される。それで北は自前での核開発に全力を注ぐようになったのである。後にブッシュ父政権の時に、在韓米軍の戦術核兵器は撤去されたと言われるが、それは地上配備の核は北の攻撃対象になりやすいので、海(潜水艦など)と空(B-52など)に重点を移したというだけのことで、北から見れば核脅迫を受けていることに変わりはない。

この状況で、北に対して「まず核を放棄しろ。そうすれば和平協定協議にも米朝国交正常化にも応じる」と言っても、納得しないのは当たり前で、1月の水爆成功声明が言うように「米国の極悪非道な対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、我々の核開発の中断や核放棄はどんなことがあっても絶対にあり得ない」という立場をとり続ける。これが「6カ国協議が行き詰まる根本原因である。

そこで発想を転換して、米韓中が合意して北に対して「直ちに和平協定のための4者協議を始めよう」と提案する。北がこれを拒む理由はないから、相互核不使用宣言(中国と北はすでに核の先制不使用を宣言しているので、米国が加わればいい)、相互軍縮・軍備管理、信頼醸成措置などの広範な緊張緩和策を含む協定がそう時間をかけずに成立するのではないか。それによって国際法的な戦争状態が解消され、米国の核脅迫に晒されない保証が得られれば、北が喰うや喰わずで核やミサイルに資金と人材を注ぎ込まなければならない理由そのものが消滅する。協定が成れば、直ちに米朝国交交渉が始まり、やがて南北統一協議も始まるだろう。

誰が考えてもこの方が合理的な早道であるはずだが、対中国との関係でこの地域の核抑止体制(という虚構)をいささかでも弱めたくない米国の核超大国ノスタルジーがそれを妨げている。

オバマさん、「核なき世界」演説でノーベル平和賞まで貰ってしまって、後々「あんな奴にやるんじゃなかった」と言われないようにするためにも、キューバに続いてもう1つ、北朝鮮との間の冷戦後遺症も片付けてしまったらどうですか。2度目のノーベル平和賞をもらえるかもしれないじゃないですか。任期はまだ11カ月もあるし……。

image by: Shutterstock

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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