【書評】無添加弁当に介護まで。常識を疑い続けるローソンの挑戦

20150615
 

今回の「3分間書評」で取り上げるのは、「マチの健康ステーション」を冠に掲げ進化を続けるローソンを、気鋭のライターが取材した1冊。読めばローソンを選びたくなる彼らのコンビニのイメージを超えた取り組みや、すべての経営者のヒントになる消費者のトレンドなどが満載です。

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なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?』 上阪徹・著 あさ出版

こんにちは、土井英司です。

タクシーの運転手さんには、ざっくり言って2種類の方がいます。

ずっとタクシー運転手の人と、何かワケありで仕事を辞め、タクシーをやっている人。

なかでも面白いのは、昔、経営者をやっていて会社を潰した人です。

そんな人にあった時は、必ずどんなビジネスをやっていたのか、なぜ失敗したのかを聞くことにしています(話が長くなる時は、わざと遠回りしてもらって、すべて聞くようにしています)。

以前お会いして勉強になったのは、伊豆で有名リゾートホテルを経営していて、潰してしまったという元経営者のタクシー運転手さん。

「なぜ潰れちゃったんですか?」との質問に、こう答えてくださいました。

運転手:「時代を読み違ったんだよね」
土井:「といいますと?」
運転手:「今の若い子って、伊豆に来てどこに行くと思う?」
土井:「どこに行くんですか?」
運転手:「コンビニ。コンビニ行って弁当買って、浜辺でいちゃいちゃしたら、そのままレンタカーで日帰りするの」

今、売れているものが何なのかを知ることは、そのまま時代のトレンドを掴むことにつながる。読み間違えれば、経営はたちまち行き詰まってしまう。じつに良い教訓となりました。

そこで本日は、時代のトレンドを掴むため、「今何が売れているか」がわかる本を紹介。

コンビニの「LAWSON」の今を、気鋭のライター上阪徹さんが取材し、レポートした、じつに興味深い1冊です。

さっそく内容を見て行きましょう。

パンの売り場には、「低糖質のパン」がずらりと並んでいた。糖尿病の人をはじめ、糖質を気にする人は多い。しかし、これほど低糖質のパンの種類があるとは、知らなかった。しかも、おいしいのだ。実は知っている人はよく知っていて、定期的にこの低糖質パンを買っていく人は驚くほど多いという

「コンビニのメイン客はかつては男性だったんですが、実はコンビニに来る男性のデザートのマーケットよりも、もともとデザートは好きだけど、コンビニに来ない女性にターゲットをシフトしたほうが、マーケットは大きいことに気がついたんです」(商品本部本部長補佐・鈴木嘉之氏)

メインターゲットは女性。ロールケーキ50円引きの社員優待を配ると、なんと利用率が80%を超えた。女性はやはり関心を持ったのだ

「プロダクトアウトとか、マーケットインという言葉があります。しかし、もう時代はパーソナルインになっていると私は思っています。マーケットとして塊になっていない。ニーズは1人ひとりみんな違うんです。そこにどれだけ応えていけるか。これが、コンビニの役割だと思っています」(商品本部本部長補佐・鈴木嘉之氏)

「経営陣に報告したら、叱られました。もしかして『取り引き』をしてるんじゃないか? と。必要なのは『取り組み』だ。相手に自分の本気度を伝えに行ったのか? だいたい、イタリアにちゃんと行って話をしてきたのか? と」(イタリアとのコーヒーマシンの交渉の話 商品本部本部長補佐・吉澤明男氏)

添加物を使わないデザート、糖質の低いパン、保存料・合成着色料ゼロのお弁当、土からこだわった野菜作り……。これまでも紹介してきたが、ローソンはなんともコンビニのイメージを超えた取り組みを次々に行ってきているのだ。それらを貫いている考え方が、間違いなくひとつある。「健康」である

「日本人がお醤油をあまり使わなくなってきている」(商品本部本部長補佐兼健康商品開発プロジェクトリーダー・伊藤一人氏)

「高齢者が進んで、遠くにはもう買い物に行けない、という方が増えてきた」(上級執行役員 ヘルスケア本部長 西口則一氏)

2020年には、ヘルスケアローソンを600店舗展開する

読むと、現在の消費者のトレンドや、効果のあった取り組みがわかり、良い経営のヒントとなります。

ぜひチェックしてみてください。

image by: wikipedia

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著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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