なぜ米国で「ポケモン」が特別な存在なのか? 現地NYからの分析

 

〈2〉日本のポップカルチャーや文化の象徴的存在になったポケモン

そんな任天堂が、アメリカでのアニメ番組の放映権や関連ゲームを含むキャラクター・グッズの版権を取得したのが、Pokemonだった。

実は、上述の「任天堂ニューヨーク」は、もともと任天堂が2001年11月のオープン時から2005年1月まで、「ザ・ポケモン・センター」(The Pokemon Center)という名前で運営していたものだったりもする。

日本の「カワイイ文化」をアメリカで普及した先駆者としてのイメージも持つ任天堂と、ピカチューを筆頭に可愛いらしいキャラクターがいっぱい登場するポケモンの親和性は抜群で、アメリカでポケモンは大ブレイクした。

しかも、ポケモンのブレイクは、アメリカ国内で、日本生まれのアニメや漫画の人気が急速に高まっていった時期にちょうど重なったため、単なるアニメやゲームとしてではなく、『日本のポップカルチャー』や『日本文化』や、さらには『日本人の美徳』のようなものまで内包し、象徴する特別な存在の1つとして、アメリカ国内で広く認識されるようになっていったのだ。

そう、『日本人の美徳』まで無意識のうちに感じさせる存在になってるからこそ、いろいろと日本人には理解できない現象も起こる。

例えば、大統領選挙キャンペーン中のヒラリーさんが、オハイオ州の公園での公式集会に多くの支持者を集めるために、「ポケモンGO」ゲーム内のその公園のポケストップに、ポケモンを呼び寄せるアイテムを配置すると大々的に呼びかけて、それがニュースになったりもする。

もしこれが、他のアプリ・ゲーム、例えば、アングリー・バードやイングレスのようなゲームだったら、たぶん、大ヒットしていても、深い文化や美徳のようなものを感じさせることはないので、それに乗っかって大々的に呼びかけたりしなかっただろう。

なお、近年、日本のポップカルチャーや日本文化は、世界各国で興味や関心を持たれ評価されているが、その背景には、何かしらのかたちで『日本人の美徳に対する共感や憧れが潜んでおり、そこに気づけるかどうかがグローバル時代を生きる日本人にとって、重要な意味を持ってくるとも思う。(これに関しては、幻冬舎plusの連載で詳しく書いたのでそちらをどうぞ)

〔ご参考〕
「ポケモンGO」に便乗?ヒラリー陣営、ストップで集会

●幻冬舎plus連載:

ニューヨーク在住の日本人マーケティング・コンサルタントが語る「日本のビジネスに本当に必要なこと」

アメリカで、ポケモンが特別な存在になっていることを示す事例は、他にもある。

毎年、サンクスギビング・デーのニューヨークで開催されるパレードには、ピカチュウの巨大バルーンが登場し、チビッ子たちに大人気。いくつもあるバルーンの中でも、特に人気のある代表的な存在になっている。

また、毎年2月初旬に開催され、長年に渡ってアメリカで最も視聴されるテレビ番組で、国民的行事とも言われるアメフト(NFL)の全米ナンバーワンを決める「スーパーボウル」は、試合中に放映される30秒のCM枠の料金が最も高いということでも世界的に有名(今年は1枠平均500万ドル、約5億円)になっており、必然的に、世界屈指のCMクリエイターたちが制作した力作CM(一般的にスーパーボウルCMと呼ばれる)は、放送後、テレビ局の垣根をこえ、各局のニュース番組やトーク番組、さらに各種新聞、雑誌、インターネット・メディアなどで取り上げられたり、人気投票の結果も紹介されるのだが、今年2016年、YouTubeユーザーが選んだスーパー・ボウルのベストCMは、可愛らしいピカチュウが登場する「ポケモン20周年記念CMだった。

さきほど、アメリカのハロウィンや、コミックコンなどで、任天堂のゲーム・キャラクター姿に仮装したり、コスプレする方々をかなり頻繁に見かけるとお伝えしたが、ポケモンのキャラクターについても同様だ。

特に、ピカチュウについては、上述の任天堂ニューヨークのお店で販売しているピカチュウ帽子を、日常的に、普通の私服姿なのにかぶっている方々を見かけることもある。しかも、お洒落なファッションに身を包んだモデルさんのような方々が集まるエリアにあるオープン・カフェとかで、だ。

もしポケモンが、アメリカ国内で、単なる子ども向けのアニメやゲームのキャラクターとして認識されていたら、こうした現象が起こるわけない。

〔ご参考〕
マンガ、アメリカを征服!

サンクスギビング・デー・パレード2015

30秒スポットCM料金がついに500万ドルに達したスーパーボウル、今年は2月7日開催

YouTubeユーザーが選んだ2016年のスーパー・ボウルのベストCMはなんとあの・・・?!

アメリカでのピカチュウの人気ぶり

1923年の創業の地に帰ってきたバーニーズ・ニューヨーク Barneys New York, Downtown

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