【書評】なぜソムリエ・田崎真也の表現力は世界で通用するのか

0308_bhg
 

例えば私たちがお客様に自社の商品やサービスを説明する際、きちんと自分の意図したとおりに相手に伝わっているかと問われて思わず考え込んでしまう方も多いかと思います。今回の無料メルマガ『ビジネス発想源』で取り上げられているのは、他人に伝えるのがもっとも難しいとも言われる「味」を表現するプロ、ソムリエの田崎真也氏による著作。ビジネスの現場でも使える「表現力」の磨き方が記された一冊です。

正しい表現力

最近読んだ本の内容からの話。

世界最優秀賞ソムリエコンクールで日本人として初の優勝を遂げ、日本の代表的ソムリエである田崎真也氏は、あるテレビ番組で、脳波を検査する器具をつけられた。脳の働きとテイスティングの関連をテーマに、そのワインのテイスティングをする時の脳波の働きを観察するためである。

すると、一般のワインファンは、嗅覚や味覚の認識を司る右脳が活動していたのに、田崎真也氏は同じワインのテイスティングの時には言語や文字の情報を司る左脳が活発に働いていた。

ソムリエという仕事は、お客様の前で吟遊詩人のごとく、ワインを文学的に表現する仕事ではない。目の前のワインの価値を判断する時に他のワインを開けて飲み比べなくても世界中に存在するたくさんのワインの中でいったいどんな位置付けにあるかを判断する。

世界中のワインの味や香りなどあらゆることを自分の頭の中に蓄積していくためには、自分で感じた感覚を言語化して、自分の頭に記憶していくのである。

そして、それをどんなお客様、どんな国のソムリエの間であろうとも、理解しあえる共通認識の情報で言語化し、他の人がそれを実際に飲まなくても文字だけでどのような味わいであるかを想像できる、そのような言語化が、ソムリエの仕事である。

人によっては意味が通じない、人によって認識している意味が曖昧でズレのあるといった言葉は、用いることができない

例えば日本ではピノ・ノワールの香りを「小梅みたいな香り」という表現があるが、小梅とは梅の品種であり、その生の小梅にはピノ・ノワールに見られる香りはない。正確には「シソにつけた小梅の香り」となるが、この表現は日本人にしか通用せず、海外のワイン関係者たちには通じない。

ソムリエは言葉を自由自在に並べて自分の感じたオリジナルな言葉によって表現しているわけではなく、感覚を相手と共感するために、互いに理解できる言葉で表現しているのである。

print
いま読まれてます

  • 【書評】なぜソムリエ・田崎真也の表現力は世界で通用するのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け