ヒアリは本当に害なのか? 加熱する外来種排斥に生物学者が反論

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大阪南港で発見されて以降、全国的に発見報告が続く、南米原産の外来種「ヒアリ」。メディアでは連日その危険性が報道され、すっかり「殺人アリ」というイメージが定着しています。メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の著者で早稲田大学教授・生物学者の池田清彦先生は、「ヒアリ」について、繁殖すれば人間を襲う危険性はある、と認めながらも、日本で定着するかは未知数であり、「そこまで神経質になる必要はない」と断言。行き過ぎた外来種排斥の流れに対し反論しています。

ヒアリとホンビノスガイ

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クビアカツヤカミキリが日本の桜を枯らしてしまって、このままでは春のお花見ができなくなるかもしれないと騒いでいたと思ったら、今度はヒアリ騒ぎで大変である。

巷間で噂されている外来種についての見解は私から見ると怪しいものが多いので、改めて私見を披露したい。

クビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)は、日本の在来種ジャコウカミキリ(Aromia moschata、日本では北海道に分布 )に近縁の種で、東アジア(ベトナム、中国、韓国)に分布する。ジャコウカミキリの幼虫は柳類の生木を食するが、クビアカツヤの幼虫桜、桃、梅などバラ科の樹木の生木を食べる。日本では2012年愛知県で初めて見つかったが、2015年ごろから分布を拡大し、現在のところ、愛知、埼玉、群馬、東京、大阪、徳島、栃木の各県で記録がある。侵入経路は不明だが、中国あるいは韓国から輸入貨物について入ってきたものと思われる。

上海と日本を頻繁に往復している知人によると、上海では普通種で桃の害虫だそうで、農家の人に嫌われているとのことだ。日本では専ら桜並木を食害すると喧伝されていて、私もこのままでは将来花見もできなくなるかもしれないと、ちょっとだけ思ったが、実際に食害されている現場に採集に行ってみて、桜並木が壊滅することはまずないだろうと思うようになった。

昔の教え子で、山梨県で中学校の校長先生をしている佐藤政幹君から福生市で発生していると聞き、7月7日に女房を誘って行ってみた。多摩川沿いの桜並木の古木には確かにフラス(食いかすや糞からなる木屑)が大量に出ている樹があり、食害されていることは間違いないが、1時間ほど探して成虫は1頭しか採れなかったので、密度はそれほど高くないと思われた。

よく見ると、健全な樹も多く、そう簡単に桜並木が全滅することはなさそうである。樹木は害虫に食われないように防御力を持つものがおおく、弱ってくると食害されてしまうのだろう。埼玉県の草加市の桜並木では、食害された樹の根元に網をかけて脱出できないようにしていて、網の中のカミキリムシの所有権は草加市に帰属するので採集するなという看板がかかっているとのこと。さらにはこのカミキリは殺虫剤では死なないので踏みつぶせという看板もかかっているようだ。殺虫剤で死なない虫はいないよね。役所が見え透いた嘘をつくのは安倍政権の真似をしているのかしら。もしかしたら、愛好家が採集して標本にするのが気に入らないのかもしれないね。

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