ヒアリは本当に害なのか? 加熱する外来種排斥に生物学者が反論

 

外来種の害はどうも誇張されるきらいがあって、何が何でも駆除しろという風潮が強いが、外来種でも可でもなく不可でもない種や、むしろ役に立つものもいる

ホンビノスガイという北米大陸東海岸が原産地のハマグリに似た貝が、1998年頃から東京湾で採れだし、21世紀になって、大阪湾でも採れだした。どうやら、北米からバラスト水(船が空荷で出港するとき、バランスをとるために港で積む海水。目的地の港に着くと荷物と引き換えに排出される)に入って運ばれた稚貝が育って定着したようだ。

典型的な外来種で、最初はアサリと競合するのではないかと言われて嫌われていたようだが、北米では美味な食用貝として知られていたので、2007年頃から首都圏の鮮魚店やスーパーなどで販売を始めたところ、ハマグリよりはるかに安く、味も似たようなものだったので評判になり、関西圏でも2010年以降販売を始めたようだ。2013年には漁業権が設定されるまでになった。外来種排斥原理主義者もこの貝を排除せよとは言っていないようなので、役に立つ外来種は歓迎という当たり前の見解に異を唱えられなかったのだろう。

昔は、日本に定着した外来生物は帰化種と言って、ことさら悪いという風には思われていなかったようである。コスモスは1879年に日本に持ち込まれた外来種だが、今や俳句の季語になって、「秋桜」という当て字まである。秋になると、コスモスを咲かせて観光の目玉にしているところもあり、コスモス街道という名の道が各地にある。外来種だから排除しろという人はいないようだ。梅もまた、古く9世紀ごろに中国から渡ってきた外来種だが、梅干や、梅酒といった日本人の生活に密着した有用植物として広く親しまれている。

image by: Shutterstock

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