もし「日中同盟」を結んだら日本の未来はどうなってしまうのか?

kitano20171017
 

無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で政治に詳しい国際関係研究者の北野幸伯さんのもとに、読者の方から「日本が日米同盟をやめて日中同盟を結べば、尖閣諸島や沖縄の問題も解決するのでは?」との質問が寄せられました。確かに一理あるようにも思えますが…北野さんの出した回答は?

日米同盟をやめて、日中同盟にしたらどうなる?

読者のMさまから、こんなご質問をいただきました。

北野様

 

メールマガジンRPEを毎回興味深く読ませていただいております。RPEで、これまでは理解できなかった、安倍首相の外交面での言動の意図がよく分かるようになりました。そうした中、疑問に思ったことがあります。

 

安倍首相が進めている日米同盟の強化ではなく、日中関係の強化を図ったとすると日本の国際社会での立場はどのようになっていくと思われますか。もしかしたら、すでにそうした解説はしておられるのかもしれませんが、ぜひご教示いただければと思います。

 

すぐにではないにしろ、日中同盟のようなことになると、尖閣諸島や沖縄は中国のものだとの主張もしなくなるなど、東アジアの地政学的なリスクは今より低くなることは考えられないのでしょうか。経済的にも一帯一路の利益を得られやすくなるのではないか。

 

アメリカと中国を両天秤にかけるわけではないですが、トランプ大統領と比べると習主席はどうなの? もよくわかりません。よろしくお願いいたします。

お答えします。

日本は、中国に接近して、ひどい目にあった

08年9月のリーマン・ショックからはじまった「100年に1度の大不況」。これで、「一つの時代が終わった」と言われています。「終わった時代」とは、「アメリカ一極時代」。

1945年の終戦から1991年末まで、世界は冷戦時代、別の言葉で「アメリカ、ソ連二極時代」だった。しかし、1991年12月にソ連が崩壊。二極のうち一極がなくなったので、「アメリカ一極時代」が始まったのです。しかし、この時代は、08年に終わった。

そして、やってきたのが現在も続く「米中二極時代」です。しかもその関係は、「沈むアメリカ昇る中国」。それで、「アメリカを裏切って中国に走ろう!」という世界的流れが出てきた。ですから、M様のように考える人がいるのは、あたり前のことです。

そして、日本も実際、「アメリカを捨てて中国に走ろう!」としたのです。そう、09年の鳩山小沢・民主党内閣の時代です。この政権は、はっきりと「反アメリカ親中国政権」でした。まず、お二人は、「日米中正三角形主義者」。

現状から見ると、「アメリカと離れ、中国に接近する」となる。「最低でも県外!」と宣言した鳩山さんは米軍を沖縄から追放しようとし日米関係をボロボロにしました。一方、小沢さんは、大視察団を率いて訪中。「私は、人民解放軍の野戦軍司令官である!と高らかに宣言しました(これ、冗談みたいな話ですが、ホントです)。小鳩時代、日本は、はっきりと「アメリカを捨てて中国に走る」姿勢を世界に示したのです。

しかし、私たちは、子供ではなく大人です。こういうことをしたら、アメリカサイドから「何らかのリアクションがあるよね」と考える必要がある。

日本人の多くは、「日本はか弱い小国だ」と思っているでしょう? か弱いかもしれませんが、なんやかんやいっても、日本は「世界第3位の経済大国」です。日本は、中国と、米国債保有高1、2位を争っているような国なのです。

はっきりいえば、「日本がアメリカ側にいれば覇権は維持できるが、日本が中国に行けば、中国が覇権国家になれる」ぐらいのインパクトはある。そんな国をアメリカが黙って手放すハズがない

何はともあれ、反米親中鳩山内閣は、短期で終わりました。次の菅さんは、反省して、少し親米になった。「TPPで第3の開国をする」などといって、オバマさんを喜ばせました。

そしたらどうです? 中国が攻撃的になってきた。それで2010年に起こったのが、「尖閣中国漁船衝突事件」です。この後、中国は、「尖閣はわが国固有の領土であり、核心的利益である!!!」と全世界に宣言しました。そして、さまざまな制裁を課してきた。「レアアース禁輸」には、ホント驚きました。次の野田さんは、2012年9月、尖閣を国有化し日中関係を戦後最悪にしました。私は、国有化に賛成ですが、「事実として」日中関係は最悪になった。

こうやって振り返ってみると、日本がアメリカを捨てて中国に走ろうとした後ロクなことがなかった。なぜ? 大国とか自立国家は、いろいろな国と仲良くできます。しかし、日本のような依存国家が二股外交をするといいことないのです。

いい例が韓国です。韓国も、李さんと朴さんの時代、アメリカを捨て中国に走った。朴さんは、米中の板挟みになって動けなくなった。それでボロボロになりました。ウクライナも、親ロシアのヤヌコビッチさんが、「浮気心」をだし、欧米に接近した。そしたら、ロシアから圧力がかかり、欧米接近を考え直した。すると、革命が起こり、ロシアに亡命するハメになった。次に起こったのは、ウクライナ内戦です。

ここまでで何が言いたいのか? 「アメリカを捨てて中国につく」というのは、「もう試したことあるよね」「酷い目にあったよね」ということなのです。

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