【国際情勢】「サウジ王族がアルカイダ支援」で浮かぶ米国の思惑

高城剛© niyazz - Fotolia.com
 

911当初からサウジアラビアの関与が噂されてはいたが……

『高城未来研究所「Future Report」』第191号より一部抜粋

今週は、世界中のメディアを席巻中のニュース、米同時テロ元被告が「サウジ王族がアルカイダ支援」と証言したことにつきまして、極めて私見的にお話ししたいと思います。

米国のニューヨークタイムズやCNN、英国のインディペンデントからBBCまで、今週衝撃的なニュースがトップを飾りました。その内容は、911のテロ実行犯として服役中のアルカイダ構成員ザカリアス・ムサウイ受刑者(終身刑)が、犠牲者遺族が起こした民事訴訟に関連して提出された宣誓証言のなかで語ったもので、それによると、オサマビンラディンの支援者はサウジアラビアの王室で、サウジアラビア側のエージェントは情報局長官ファイサル王子であり、また、ムサウイ受刑者がアルカイダとサウジアラビアの連絡係として、直接バンダル王子(22年間元駐米大使、ブッシュの中東パートナー)と会ったことを証言しています。当時アルカイダだったムサウイ受刑者には、サウジアラビアから移動のためのプライベートジェットやリムジンが用意され、王族との面会場所は高級ホテルや宮殿で行われた、と報道されました。

また、アルカイダによる米本土攻撃計画について協議するため、米駐在のサウジアラビア政府高官とアフガニスタンで面会した、ともムサウイ受刑者は供述しています。これは、911に対して政府に納得がいかない被害者による市民起訴から発覚したもので、いままでも噂話は、911当初からサウジアラビアの関与が根強くありましたが、公式に(宣誓証言のもとに)このような事実が表面化したのは、はじめてのこととなります。

一方、在米サウジアラビア大使館は、ムサウイ受刑者の一連の主張を否定し、「非常に危険な犯罪者であり、担当弁護士も同受刑者は心神喪失状態にあるとの証拠を提出している」として、供述には信頼性がないとの声明を発表しましたが、もはやそのように答える以外、サウジアラビアには選択肢がありません。

いままで、このような「通説」は、陰謀論として片付けられていましたが、オサマ・ビンラディンはサウジアラビア人で、もともと王室と米国共和党に極めて近しい人物であり、また、911直後に米国が混乱し、多くの人が出国さえままならないなか、米国内のサウジアラビア要人は、ブッシュ政権の計らいで極秘裏に帰国することを認められていました。これはサウジアラビアと米国、というより米国におけるサウジアラビアの王室の立場を端的に表す事実です。

また、これはサウジアラビアに限りませんが、中東の王室にとってもっとも困ることは「民主化」です。それは、ある日を境に「国王」が突如「平民」になってしまう可能性があるからで、ですので、テロの標的国家になることも問題ですが、なにより米国によって扇動された「民主化」運動をもっとも恐れているのです。

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