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日本人は現金に逆戻り?キャッシュレス普及を阻む「7月の壁」と中小店を襲う地獄=岩田昭男

10月にスタートしたキャッシュレス・消費者還元事業で、順調に脱現金化が進んでいます。しかし、この春は長くは続かないかもしれません。2020年7月に大きな壁があるのです。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

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プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

儲けがなくなったときが止め時?2020年7月までのお祭りか…

日本のキャッシュレス比率、30%へ届く勢い

10月に消費増税と同時にスタートした「キャッシュレス・消費者還元事業」。

複雑な仕組みで果たしてどれだけの人が利用するか心配されましたが、蓋をあけてみると、電子マネーやQRコード決済といったキャッシュレス決済がよく使われるようになりました

近くのコンビニでも「昼休み」にできていたレジの行列が「午後」にも、「夕方」にもできるようになっています。

大手コンビニなら必ず2%即割になり、しかもそれがレシートにきちんと記載されるので「お得」を実感できるからお客が集まるのです。

キャッシュレス決済の利用者数は全体的に増えており、楽天によれば「楽天ペイ」のアプリをダウンロードした人が、9月1日に比べて10月1日は10倍に増えたと言いますから驚きです。

いよいよキャッシュレスが本格的な普及に入ったといえるでしょう。

この調子でいくと、現在20%程度の日本のキャッシュレス比率は、早晩30%に届くと思われます。

ポイント獲得とキャッシュレス促進に躍起

それと同時に政府は、中小店に対して、クレジットカードや電子マネーの専用端末の設置に補助金を出して促進を図っています。

機材はほとんどタダで店舗はもらえる仕組みです。

加盟店手数料も平常3~7%といわれていますが、約2%まで引き下げて店に儲けが残るようにしてくれました。

そのため、キャッシュレスの手数料は中小店では、10月から来年6月30日までは、2.17%という低率で提供されています。

その影響で先進的な小売店は続々キャッシュレス化を始めています。

利用者としても身近な中小店で5%ポイント還元が受けられることに気づきだしたので、様々なキャッシュレスのツールを使って「お得」を獲得しようと躍起になっています。

Next: 中小店には地獄。2020年7月に来るキャッシュレス普及を阻む「大きな壁」



彼方に見える「7月の壁」が気になりだした

しかし、「キャッシュレスの春」は長くは続かないようです。

この制度は来年の6月30日には終了します。ポイントだけでなく、手数料の優遇もなくなり元に戻されますから、今後は利用者の多くと店の経営者たちは影響をもろに受けるでしょう。

すべての優遇が終わった後の来年7月1日は「7月の壁」と呼ばれており、店主たちはそれに備えて、忖度し身構えているところです。

このうち手数料の低利率政策は経済産業省とカード会社の取り決めで実現したものといわれますが、その際に7月以降は利率をもとに戻すという密約があったといわれています。

つまり7月からは元の3%~7%に返すと、カード会社に経済産業省は約束させられたのです。

したがって、7月からの手数料率の引き上げは確実にあると思っておいた方が良いでしょう。

「儲けがなくなった時がやめ時だ」

しかし、こうなると中小店にとっては地獄でしょう。

せっかく還元事業に乗ってカード事業を始めたのに、そしてやっと固定客の取り込みに成功して順調な流れになろうとしているのに、3%〜7%の手数料を払ってしまえば儲けは吹っ飛ぶから、とても継続はできません

それがわかっているから中小店では、「7月の壁」を前にして、キャッシュレスを続けるべきか、止めるべきか、迷っているのです。

一方、利用者の方も5%のポイント還元がなくなるのなら、買い物は控えるようになるでしょう。

また、お得がないのに、わざわざキャッシュレスを使う必要はなくなりますから、元の現金社会に帰るということです。

また、小銭をじゃらじゃら使う世の中になるのでしょうか。

現金への回帰は起こらない?

しかし、そうした一方的な見方には反論する向きもあります。

ある友人は、「現金社会に帰るというのはキャッシュレスの威力を知らない者が言うことだ」と言っています。

たしかにそうですね。利用者は一度スピーディな決済を体験すると、現金に帰れないと、私も実体験で断言できます。

スイカで0.2秒の決済のスピードを味わったら、もう手放せなくなってしまいました。

それからすでに20年。現金を再び主体で使おうなど考えたこともありません。

人間は安易ですから、便利な方に流れるのです。キャッシュレスも例外ではありません。

Next: まだまだポイント付与が足らない?大企業の覇権争いは続く



キャッシュレスを促進するにはまだまだポイント付与を続けよ

だから、いまが最も大切な時といえるでしょう。

還元事業で獲得した利用者の「スピーディ」という体験を潰さずに大切に育てることを考えるべきです。店主の「スピーディ」という体験も潰さずに大切に育てるべきです。

それにはポイントの継続を7月以降も行い、店には手数料などの補助を続けることしかないでしょう。

少なくとも2020年内は補助を続けるべきでしょう。

マイナンバーカードが物議を醸す

また、9月からマイナンバーカードのポイントサービスが始まり、25%ポイント還元もあり、騒ぎになりそうです。

マイナンバーカードはクレジットカードや電子マネーとは異質ですから、利用は慎重に考えてほしいですね。

キャッシュレスは大企業の覇権争いへ

ポイント還元事業のスタート時は、ポイント還元率やキャンペーンが話題になりましたが、いつの間にかヤフー・LINE・楽天・JR東日本・トヨタといった大企業が表舞台に現れてしのぎを削り始めました。

つまり、QRコード決済の本質は、大企業の覇権争いにあったということだったのです。

そこから何が消え、何が生まれるのか。

忘れてほしくないのは、儲け第一に走ることでなく、社会課題の解決を第一に掲げて欲しいということです。

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達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2019年12月1日号)より抜粋
※タイトル、見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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