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au「KDDI」の名を捨て天下取りに本気。auPAYの失策大炎上を経て快進撃が始まった=岩田昭男

auグループの快進撃が始まった。ポイントを「Pontaポイント」に統合するなど、本格的に数(会員)を取る戦略に出てきた。これまでドコモとソフトバンクの影に隠れていたauが、トップを取る意志をはっきりみせたといえる。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

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プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

auの変身が進んでいる

5月下旬以降「auWALLETポイント」が三菱商事系の「Pontaポイント」に統合される。

auは激しくなるスマホ戦争を勝ち抜くため、ソフトバンクとドコモに対抗して、共通ポイントの「Pontaポイント」と連携する道を選んだ。

業界第2位の「Pontaポイント」はすでに登録者9,436万人を越えており(2020年4月末時点)、コンビニのローソンだけでなく、リクルートの「ホットペッパー」「じゃらん」など、auの垣根を越えて幅広い場所で利用できるようになる。

いよいよ本格的に数(会員)を取る戦略に出てきたわけで、これまでドコモとソフトバンクの影に隠れていたauが、トップを取る意志をはっきりみせたといえる。

前代未聞の大規模改革の内容

auはいま天下取りのために、グループのすべての部門で様々な改革を実行中なのだが、その内容もすごい。

まずは、「KDDI」の名前をすべて外して、「au」に統一するという荒業を行っている。auの運営会社KDDIは通信事業のほかにも様々なサービスを運用しているが、名称がそれぞれで異なっており、同じグループであることがわかりにくかった。

そこで2019年4月1日にauフィナンシャルグループホールディングス株式会社を立ち上げて、傘下8社の名称の先頭にauを付けることでグループであることをアピールすると共に、通信事業との連携を強化する全社横断的な大改革をおこなっているのだ。

・株式会社KDDIフィナンシャルサービス → auフィナンシャルサービス
・ウェブマネー株式会社→ auペイメント
・じぶん銀行 → auじぶん銀行

ほかにauを冠することになったのは「カブコム証券」「アセットマネジメント」「損保」「Relnsurance」「フィナンシャルパートナー」の計8社となる。

次に行われたのが、先に述べたポイントサービスの大転換である。「auポイント」をやめてすべて「Pontaポイント」に変えた。

それだけでなく、「au WALLET」もまた名称を変更して「au PAY」となる。小口融資の「スマートローン」や「クレジットカード」など提供されていたサービスも、すべて「au PAY」の新名称へと移行してそのまま提供される。

Next: この大改革について、auフィナンシャルホールディングスの担当者は――



「金融サービス」から「生活者向けサービス」へと方向を変えた

この大改革について、auフィナンシャルホールディングスの担当者は、「構想の中核にあるのは、金融サービスの提供ではありません。スマートフォンを通じてお客様の日常生活における金融や決済サービスをより身近に変えていくことを目指しています」と話す。そのため、プランの中から「金融」という言葉をあえて外しているという。

そういわれれば、たしかにWALLET(お財布)という単語は消えて、PAY(決済)に名称を移行しているし、金融に限らず、広い範囲で使える「Pontaポイント」を導入したことから、auの今後の戦略が見えてくるように思われる。

さらに、MVNOなど通信事業への参入基準の緩和や、キャッシュレス決済の動向を受けて、自社だけで完結した「金融優位」の経済圏を確立するよりも、他社と組んで生活者に近い経済圏を拡大することを選んだといえる。

その現れが、2019年8月29日から「au PAY」をキャリアフリー化したことや、今回の「Ponta
ポイント」への移行なのだ。

QRコード決済会員数の比較

通信事業大手3社の中でも、KDDIは特に存在感が薄い。

「auPAY」の会員数は2,200万人(2019年12月時点)、「PayPay」の会員数も2,400万人(2020年2月時点)、「dポイントクラブ」の会員数は7,500万人(2020年3月31日時点)となっている。

auの会員数が極端に少ないようには見えないが、前身の「au WALLET」が2014年から決済サービスを展開してきたのに、2018年に登場した新参者のPayPayにすでに会員数で200万人も差をつけられているのだから、いかに伸び悩んでいるかがわかるのだ。

もともとauは、au経済圏を事業計画に打ち出していた。au携帯電話サービスの契約件数は5,809万人(2019年12月時点)もあり、生活者指向の素地はすでに十分にあったのだが、これまで「金融サービス」にこだわってきたため、QRコード決済では、ライバルに差をつけられたのではないかと思われる。

Next: これまでKDDIグループは、各事業部の統合を図ろうとしたが、そのたびに――



KDDIと経営統合

これまでKDDIグループは、各事業部の統合を何度か図ろうとしたが、そのたびにギクシャクしてまとまらなかったといわれる。

不仲の原因は、KDDIの誕生時にさかのぼる。

KDDIグループは、KDDとDDI が中心となって、TWJ 、IDOの合計4社が合体してできた会社だ。とくにお公家さまといわれたKDDと野武士といわれたDDIの社風が水と油のように違ったため、融合が難しかった。今は改善されたとはいっても、まだ壁の残滓はあるようだ。

さらに今回は、KDDIグループと三菱商事グループが提携するわけで、その意味でも様々な部門をauの名の元に統合して一本化することで力を引き出さねばならない。

au PAYの失敗は経験不足から

しかし、先行きはあまり明るいとはいえない。auグループとして他社に対し大攻勢をかけたいところだが、最初の試金石となった昨年の「auPAY」のキャンペーンでは散々な結果であった。

キャリアのQRコード決済として華々しく登場した「auPAY」も、先行する「PayPay」を真似て20%還元キャンペーンを展開したのだが、チェリーピッカーがビックカメラなど特定店舗に集中して、急遽、取りやめるなど不手際が目立った。

初めておこなう事業であるから仕方のない側面もあるのだが、同じ失敗を何度も繰り返したので、ネットでは炎上した。

2018年12月の「PayPay」の「100億円あげちゃうキャンペーン」でも同様の事例が見られたことから、あらかじめ対策を練ることができたはずなのに、何もしなかったと非難が広がった。

また「#auPAY誰でも毎週10億円もらえる」と還元キャンぺーンをツイッター広告に出したところ、総額が10億円なのにその旨が広告ではわからず「景品表示法違反に当たる」とこれまた稚拙な炎上を起こしている。

Next: また、少し前のことだが、クレジットカードでも、ライバルのドコモに差を――



おとなしすぎるゴールドカード

また、少し前のことだが、クレジットカードでも、ライバルのドコモに差をつけられた。

ドコモの「dカードゴールド」は最大10%の還元率で600万枚を超える発行枚数を誇っている。

それに対抗してKDDIもゴールドカードを発行して、こちらは還元率11%を謳っていた。しかし、PR不足でいまだに冴えない。1%でも優れているのだから、ここはもっと訴求すべきなのだが、auユーザー内ですら知られていない状況だ。

というように万事が遠慮気味で、おとなし目である。

au会員に持ってもらえば良いなんて考えていると、結局その半分ぐらいしか会員は集まらない。ソフトバンクやドコモを使っている人にも持ってもらうという意気込みで営業しなければ、目的は達成しないだろう。

まず、こうした精神的なところを変えていかないとどうにもならない。

ライバル各社は意気盛ん

ソフトバンクは、Yahoo!を使って「PayPay」と「LINE Pay」を手に入れ、盤石の体制を築きつつある。昨年9月のアパレルECサイト大手の「ZOZO」を買収したのも、その動きの一部といえる。

最終目標はソフトバンクグループの中国アリババが手掛ける「アリペイ」であろう。

決済手段としてだけでなく、レストランなどの予約、保険、資産管理や融資などのサービスも提供するスーパーアプリ(1つのスマホの中ですべてのサービスの予約から支払いまで一環してできること)を目指している。

ドコモも、「d払い」を推し進めているが、インターネット上のサービスが弱かったので通販サイトAmazonの「プライム特典」、フリマアプリ「メルカリ」へのdポイント付与、リクルートの「じゃらん」「ホットペッパー」などの予約サイトとの連携と次々に分野提携を進めて、こちらも着々とスーパーアプリ化を進めている。

このスーパーアプリはauも同じく狙うところだが、現状はソフトバンクとドコモに一歩先んじられている。

これまでの戦略では後追い感が否めないため、さらに思い切った戦略をとらないとジリ貧になってしまうだろう。

Next: 後手に回っているように見えるauだが、実際にはすでに幅広い事業を持って――



まとめーau快進撃は可能か

後手に回っているように見えるauだが、実際にはすでに幅広い事業を持っており、スーパーアプリとなる下地はできあがっている。

弱点である事業間連携を強めていけば、相乗効果も十分に見込める。

あとは精神的な要素が大きいともいえる。広告・広報面を強化して大胆に強みを打ち出していくことで成果は得られるだろう。

auの強みは、楽天にモバイルのインフラを提供することだ。

夏までに楽天はSuicaと提携を始めるようだから、そうした武器を使ってライバルに対抗すれば突破口は開けるのではないか。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年5月18日)
※タイトル、見出しはMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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