南シナ海「航行の自由」作戦、米国側はどう報じてるのか?

US_Navy_091117-N-1644H-327_The_guided-missile_destroyer_USS_Lassen_(DDG_82)_is_underway_in_the_Pacific_Ocean
 

米軍が展開を開始した「航行の自由作戦」についてさまざまな報道がなされていますが、アメリカではどのように報じられているのでしょうか。戦略学者の奥村真司さんがご自身のメルマガで、米国サイトの記事を紹介・解説しています。

南シナ海の米中激突について更に解説

Freedom of Navigation Operations in the South China Sea: What to Watch For By Adam Klein, Mira Rapp-Hooper 15-10/23 Lawfare

おくやまです。

番組でも触れましたが、米海軍は南シナ海の中国の人工島の近辺に軍艦を航行させる、いわゆる「航行の自由作戦」(FONOPS)を絶賛実施中であります。

ところが実際の米海軍の狙いが何なのかは、新聞やニュースを見てもよくわかりません。そこで私がその法的な面と、アメリカ側の狙いについて簡潔にまとめた冒頭に紹介した記事をベースにして、ここでわかりやすく説明してみたいと思います。

まず今回の南シナ海の領土争いで焦点になっているのは「国連海洋法条約」(UNCLOS:1982年)で定められた、いわば世界の海における領土・領海に関する国際法です。しかしここで問題になるのは、

<アメリカ>条約を批准していないが、その慣習は守っている

のに対して、

<中国>批准しているが、その慣習を守っていない

という点です。お互い守っているようで守っていない宙ぶらりんの状態で、法律面では互いにツッコミがかませるという微妙な状態です。

さらに問題なのが、アメリカと中国は、その領海などの分野に関して、大きく異る見解を持っていることです。たとえば島から伸びる領海(12カイリ以内)と経済的排他水域(EEZ:200カイリ以内)の領有権に関して、

<アメリカ>
・領海とEEZ、どちらも無許可で無害通航(平和的な通過)が可能
・EEZでは軍事的なオペレーション(海底探査や軍事演習など)までOK

として、かなりオープンなのに対して、

<中国>
・領海に入るには無害通航で、当該国には許可が必要
・EEZの中では無害通航でオペレーションは不可能

というかなり条件の厳しいものになっております。なんというか、陸の領土の延長のような感覚なんですね。

ちなみに番組ではアクシデント的に妙な絵になってしまったのはこの説明の部分なんですが、まあ見逃してください。

print
いま読まれてます

  • 南シナ海「航行の自由」作戦、米国側はどう報じてるのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け