「無印良品」と「おいしい牛乳」に共通する、“消える”という哲学

 

少し抽象的すぎるかもしれません。具体例を出してご説明しますね。

そう、誰もが知っている、ある意味最強のブランド『無印良品』を思い浮かべてもらえると、わかりやすいかもしれません。

例えばあなたが『ノートが欲しいな』と思ったとき、ノートを買おうと文房具売り場へ出かけます。あなたはとにかく、何か書き記したい事があるだけです。

しかし、その文房具売り場には『Campus!』という大きな大きな文字が、まるで何かの広告看板のように並んでいて、どうだと言わんばかりに目に入って来ます。

別にコク○さんに喧嘩を売ってる訳でもないですし、個人的にCampusのデザインはなかなかに素晴らしいものだとも思っています^^;

でも『別にオレ大学生でもないし、Campusなんてでかでかと書かれてもな』。仕方なしにあなたはCampusをお買い上げです^^。

あなたが日記を書こうとしてても、勉強の為にノートをつけたいと思っていても、そこに既に会社がつけた(例えばCampusという)タイトルが既に存在している。

たかだかノートなんで、普通そこまで考えないでしょう(少なくとも意識はしていないでしょう)。でもみんな心の底では、過度にデザインされることについて辟易している。

そう、実は『そんな過度のデザインを消したい!』と、無意識にそんな風に思ってるのです。だって『Campusノートでなくノートそのものを使いたい』、そう思いませんか?

そんな『(過度の)デザインを消したい』という、自分たちで気がついていないような共通の欲求をそのままコンセプトにして、無印良品は生まれたようなものです。ですから『無印』であり『良品(もの)』なんですね。

自分は“ノートそのもの”が欲しいわけで、自分の預かり知らない所でメーカーさんが勝手に名付けたCampusとかノートのタイトルなんかいらないけどな

だから出来れば商品には『無印』であって欲しいんだ。ノートを使ってる時はデザインを忘れたい。

デザインを忘れられるくらいに自然に。ノートならノートとして使えることこそ、最高のデザインじゃないの? そんな矛盾した真理が確かにここに存在しています。

無印。印を無くする印を消すと言うのは、ブランド名を消しながらブランドを強くしようという、絶妙なネーミング(ブランディング)ですが、つまりはデザインにも消えてもらいたい! そう言ってるようにしか聞こえません。

しかし、これは『どうやって目立つか?』だけを追いかけてものを作ってきたデザイナーからすれば、目からうろこの発想です。

皮肉な事に無印良品という名前は、『デザインを消し去る!』というコンセプトを打ち出すことで、どんなデザイナーズブランドも叶わないような非常に強大なブランドとなったのです。

まさにデザインを消すことで、他の商品との差別化に成功しているのです。

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