「無印良品」と「おいしい牛乳」に共通する、“消える”という哲学

 

でも、それって無印良品でもない限り、何がしかの商品には商品名だって必要ですし、デザインを消さないといけないって何? どうするつもり?

もしあなたがデザイナーであれば、こんな風に考え、まず混乱するはずです。

確かに無印良品の場合は、色々な商品カテゴリをぶちぬきで横断して、全ての商品から商品タイトルを消すという、ある意味大掛かりでかなり特殊な例であるとも思います。

デザインを消すという事をご説明するのに最適だったので、無印良品を例として使わせて頂きましたが、他のパッケージデザインでもまさに“デザイン”を消すことで、他の商品との差別化に成功しているものはあります。そしてそういうデザインを目指しているデザイナーの方もいます。

佐藤卓さんという方などは、まさに今回の『デザインを消す』というテーマに、とてもふさわしいデザイナーだと思われます。と言いますか、実は今回のテーマは『デザインの現場』に載っていた、佐藤さんのインタビューを読んで思いついたテーマでした。

佐藤さんのデザインは、デザインという邪魔な要素を消して人と商品を直接繋げる、そんなコンセプトで作られているものが多いように思います。

例えば、ロッテのチューインガムミントシリーズやキシリトールのシリーズ、ピュアモルトのパッケージデザイン、カルピス。

そして最近では、明治の『おいしい牛乳』をデザインされています。

このデザイン、明らかに無印良品とは違い、きちんと『おいしい牛乳』というタイトルもついていますし、MEIJIという会社名も水色に赤でぴりっと(?)目立ち、ど真ん中の『おいしい牛乳』のバックには、おいしそうに注がれる牛乳のイラストまでも描かれています。

ただ、そういう商業的なデザイン要素をきちんと押さえつつも、非常にデザインとしてニュートラルなものになっていて、前へ前へ主張する、過度に装飾的なゴリ押し感が全く見えません。

何か高級品のデザインならいざ知らず、スーパーでばんばん売っている商品であるにもかかわらず、何と静かな空気感を出しているでしょう。

先に紹介したロッテのチューインガムミントシリーズなども、全く似た方向性のデザインで、多分意識的にそういう自然で主張しない、消えるタイプのデザインを佐藤さんは追い求めているように思えます。

佐藤さんの他のデザインを見ても、そういう雰囲気に満ちていて、「静かでそれでいて強いデザイン」ばかり集まっています。

佐藤卓さんのホームページ

このホームページ、ご自身がショートムービーで自分のデザインを解説されていたりするので、見ているだけでデザインの勉強になってしまいます。

それぞれ『デザインというもの』が全然出しゃばっていない。それでいて、いやそれだからこそ商品自体の魅力が浮き上がってくる。そんなデザインばかり並んでるように見えないでしょうか?

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