「無印良品」と「おいしい牛乳」に共通する、“消える”という哲学

 

でしゃばらないデザインって、実は一番実現するのが難しい高度なデザインかなと感じます。

多分ロゴの置き方ひとつ、余白の取り方ひとつ、全てあるべき場所にレイアウトをきちっと決めないと、デザインを消すデザインは完成しないのではないでしょうか?

美大予備校に通っていた頃、デッサンについて、まあ絵でもあるし『目立った方が良いのだろう』と、漠然と思ってました。『良いデッサン』とは少なくとも目立たないとダメだろうと。

でも、良いデッサンとして飾られたデッサンは、とても自然にモチーフが描かれていて、『良いデッサンの基準がどこにあるのか?』わからなくなり、僕は講師に『良いデッサンの基準』を聞いてみました。

『どうだ上手いだろう!とか主張して来ないデッサン、一番自然に見えるデッサンが一番良いんだ』

そんな風に講師は答えてくれて、『なるほど』と思った記憶があります。

この『良いデッサンの基準』って、今回書かせてもらった『現れるデザイン消えるデザイン』というテーマにも繋がるような気がします。

デザインも、確かに商品として他と差別化されるような目立つ事も確かに大事なんですが、

「見ていて疲れない」
「周りのモノ達とも違和感がなく気持ちよく存在してくれる」
「デザインそのものは主張せずに私達と直接モノが伝わる橋の役目としてデザインがある」

長く続くデザイン、名品と言われるデザインを良く見てみると、必ずそういうポイントを押さえている、そんな風に思うんですね。

最近リニューアルするまで、永遠に続くのではないかと思うほど続いていた明治チョコレートのパッケージデザイン、1971年~2009年まで全く変わってません(もちろん時代に合わせて微調整はされていますが)。

全ての要素が収まるところに収まり、良く見せよう、というデザイナーのエゴのような想いを消し去ることで、このデザインはいつまでも愛されるような普遍性を勝ち取っているのです。

そして「表に現れるデザイン」「消えるデザイン」、この相反するふたつの要素は、コインの裏と表でありながら実は根っこの部分は同じものではないか? そんな風に感じたりします。

昔あるデザイナーが、その商品が『デザインされてることすら忘れてしまう』ものを作りたい、、、と言いました。

はじめそれを聞いた時、意味がよくわからなかったのですが、最近、何となくそのことが理解できるようになりました。

周りに馴染み、静かに強く光るようなデザイン、そういうデザインの無印良品や、佐藤さんの一連のデザインなどを参考にして、深く考えてもらえたらと思いました。

「消えるデザイン」「現れるデザイン」。全く違って見えるふたつの要素を、忘れないでいてもらえたらと思います。

最後まで読んで頂いて有り難うございました。

image by: August_0802 / Shutterstock.com

 

『プロが教える「美大いらずのデザイン講座」』
美大で教えているようなデザインの基礎を、初心者の方にもわかりやすく説明していきます。デザイン史やプロの現場の話も交え色々な角度からデザインについて書かせてもらいます。デザイナーになりたい方やただデザインに興味のある方等に読んで頂いてます。
≪最新記事を読む≫

print
いま読まれてます

  • 「無印良品」と「おいしい牛乳」に共通する、“消える”という哲学
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け